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高度な活用/2026-07-10上級

停止するモデルで作った画像は、二度と同じものが作れない — 再生成可能性を台帳で管理する

8月17日に停止する Gemini の画像生成モデルで作ったアセットは、停止後は同じ手順で再現できません。何が再生成可能で何が凍結資産なのかを台帳で切り分け、移行前に判定を終えるための設計と実装をまとめました。

Gemini API176画像生成6モデル移行7アセット管理個人開発79

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移行の準備をしていて、手が止まった瞬間がありました。

呼び出し箇所の棚卸しは終わっていました。停止対象のモデルIDを叩いているスクリプトも、月末バッチも、洗い出せていました。あとは新しいGAモデルに差し替えれば済む——そう思っていたところで、壁紙アプリのアセットディレクトリを開いてしまったのです。

そこには、停止するモデルで生成した画像が数百枚ありました。すでに配信済みのもの、これから新しい端末解像度に合わせて書き出し直す予定のもの。私は、そのうちの何枚が「同じプロンプトを新モデルに投げれば同じ絵柄で作り直せる」のか、まったく答えられませんでした。

移行とは、コードのモデルIDを書き換えることではありませんでした。過去に作ったアセットの再生成可能性を、停止日より前に確定させることでした。

呼び出し箇所の移行が終わっても、資産の移行は終わっていない

停止告知への対応は、たいてい二段階で語られます。呼び出し箇所を洗い出し、移行先モデルを決め、差し替える。ここまでは8月17日の停止に備えて呼び出し箇所を洗い出す手順で扱った領域です。

けれど画像生成は、テキスト生成と決定的に違う点があります。出力そのものが長期保管される資産になる、という点です。

テキスト生成なら、モデルが変わっても同じ入力から「意味的に等価な」出力を得られれば実務上は困りません。画像は違います。壁紙アプリで「同じシリーズの5枚」として配信している画像のうち1枚だけを新モデルで作り直すと、色調も筆致も揃いません。並べた瞬間に破綻が見えます。

つまり私が直面していたのは、こういう構造でした。

対象停止日までにやること停止日を過ぎたら
コードの呼び出し箇所モデルIDを差し替える差し替えれば動く(いつでも回復可能)
生成済みアセット再生成可能かを判定する判定手段そのものが消える

右下のセルが本質です。停止後は、旧モデルを呼べません。だから「旧モデルの出力と新モデルの出力がどれくらい似ているか」を測ることが、原理的に不可能になります。判定は停止日より前にしか行えない。この非対称性に気づいたとき、優先順位が入れ替わりました。

何を記録していなかったか — provenance の欠落

判定をしようとして、最初の壁にぶつかりました。手元のアセットには、何のモデルで、どんなプロンプトから作ったのかが残っていなかったのです。

ファイル名は wp_aurora_03.png のような通し番号。生成スクリプトはプロンプトを変数に持ったまま実行され、成功したら画像だけを保存して終了していました。私自身、当時は「またすぐ作り直せる」と思っていたので、記録する動機がなかったのです。モデルが消える日が来るとは想像していませんでした。

この後悔は、そのまま設計要件になりました。生成の瞬間にしか手に入らない情報があります。それを取りこぼすと、あとから復元できません。

台帳(provenance ledger)に最低限残すべき項目は、次の6つに落ち着きました。

項目なぜ必要か
model_id停止対象かどうかの一次判定に使う。エイリアス(-latest)ではなく解決後の実体を記録する
prompt / negative_prompt再生成の唯一の入力。1文字の差で絵柄が変わるため原文のまま保存する
paramsアスペクト比・枚数・safety設定など、出力を左右する全パラメータ
output_sha256アセットと台帳行の紐付け。ファイル名の変更に耐える
embedding新旧出力の類似度を測る基準ベクトル。停止後も残る「旧モデルの痕跡」
generated_atモデルの微更新期間を跨いだ差分の切り分けに使う

5行目の embedding が、この設計の要です。停止後に旧モデルは呼べませんが、旧モデルが出力した画像そのものは手元に残ります。その画像を gemini-embedding-2 で埋め込みベクトルに変換して保存しておけば、停止後であっても「新モデルの出力がどれだけ元の絵柄から離れたか」を測り続けられます。消えるのはモデルであって、出力の痕跡ではありません。

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この記事で得られること
生成時のモデルID・プロンプト・出力ハッシュを記録する provenance 台帳のスキーマと、既存アセットへ後付けする移行スクリプト
gemini-embedding-2 の画像埋め込みで新旧モデルの出力差を測り、cos類似度 0.86 を境に「再生成可能/凍結」を機械判定する手順
凍結アセットを再生成対象から外し、派生処理(解像度違いの書き出し)だけを新モデルへ移す二層パイプラインの実装
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