受託でお預かりしているサイトの月次報告をまとめていた朝に、Workspace Studio へ4つのステップが増えたという告知を読みました。Drive のコピー、Drive の移動、Chat への返信、メールへの返信。四つとも「あると助かる」ものばかりで、最初は素直に嬉しかったのです。
ところが、告知のなかで私の手が止まったのは機能の説明ではなく、ロールアウトの日付が二段に分かれている箇所でした。管理者向けの設定が先に届き、機能そのものは後から来ます。しかも Drive・Chat とメールで、その二段の日付がそれぞれ違います。
この日付の並びを見て、私は自分の開け方を決めました。四つを同じ日に開けない、という決め方です。
増えたのは四つ、けれど性格は二種類です
まず届いた内容を、日付ごと整理しておきます。日程は Google Workspace Updates の告知(2026年9月2日)に記載のものです。
| ステップ | できること | 管理コントロール | 機能の提供 |
|---|---|---|---|
| Copy Drive file or folder | フローの実行時に Drive のファイル・フォルダを複製する | 2026-09-01 開始 | 2026-09-08 開始 |
| Move Drive file or folder | Drive のファイル・フォルダを自動で移動する | 2026-09-01 開始 | 2026-09-08 開始 |
| Send a Chat reply | 指定したスペース・スレッドへ返信する(Markdown 対応) | 2026-09-01 開始 | 2026-09-08 開始 |
| Reply to email | 既存のスレッド内でメールに返信する | 2026-09-08 開始 | 2026-09-14 開始 |
提供対象は Business Starter / Standard / Plus、Enterprise Standard / Plus、Education Fundamentals / Standard / Plus ほかで、Gemini for Google Workspace のステップを許可していれば既定で使える状態になります。管理者側にはステップを個別に無効化する設定と、組織の外へデータが渡りうる操作について利用者の承認を求める設定が用意されます。
四つを並べると、機能の粒度はよく似ています。それでも私には、前の三つと最後の一つがまったく違うものに見えました。
管理の設定が、機能より先に届く一週間があります
日付をもう一度ご覧ください。Drive と Chat のステップは、管理コントロールが9月1日、機能が9月8日。メールのステップは、管理コントロールが9月8日、機能が9月14日です。どちらも管理側が一週間ほど先行しています。
順序が逆に見えるかもしれませんが、これは設定を決めるための時間だと受け取っています。フローを組める人が現れる前に、組織として何を許すかを置いておける期間があるのです。
最初のうち、私は新機能を「出てから考えればよいもの」として扱っておりました。結果は芳しくありませんでした。使える状態になってから慌てて設定を探すと、探している最中にもう誰かが試していて、後から止めるほうが手間になります。いまは告知を読んだ日に、機能の日付ではなく管理コントロールの日付だけをカレンダーへ置くようにしています。
開ける順番は、便利さではなく、取り消せるかどうかで決めています。 この一文が、今回の四つを二つに割った理由のすべてです。
コピーと移動は自分の中で閉じ、返信は外へ出ます
Drive のコピーと移動は、失敗しても自分のドライブの中で完結します。想定と違う場所へ運ばれたら、戻せばよいのです。Chat の返信も、社内のスペースであれば、その場で訂正を続けて投げられます。
メールの返信は違います。既存のスレッドへ、私の名前で、相手の受信箱に着きます。届いたあとで「いまのは自動でした」と説明する場面を思い浮かべると、私は胃のあたりが重くなります。受託でお付き合いのある方とのやり取りであればなおさらです。
ですから今回は、Drive と Chat の三つを9月8日以降の週に開け、Reply to email は9月14日より後ろへ倒しました。倒しているあいだに確かめるのは二点だけです。組織外へ渡りうる操作に承認を求める設定がどこにあるか。そして、自動返信の対象にしてよいスレッドの条件を、自分の言葉で書けるか。
書けないうちは開けません。条件を言葉にできないものは、フローの条件式にもできないからです。
移動の前に、宛先フォルダの共有を見ておきます
Move Drive file を実際に使う前に、一つ確かめておきたい挙動があります。My Drive の共有フォルダ間でファイルを移動すると、移動元のフォルダから継承していた権限は外れ、移動先のフォルダの権限を継承します。ファイルへ直接設定した権限は残りますが、フォルダ由来の部分は入れ替わるわけです。
つまり自動の移動は、置き場所を整えるだけでなく、そのファイルを開ける人を変えることがあります。人が手で運んでいたときは「このフォルダは共有していたな」と思い出せましたが、フローは思い出してくれません。
そこで私は、宛先候補のフォルダをフローに書く前に、Apps Script で共有の状態を一度だけ吐き出しています。
/**
* Workspace Studio の Move / Copy ステップで宛先に指定する予定のフォルダを、
* 事前に棚卸しするためのスクリプト。
* 実行すると各フォルダの共有範囲と、直接共有されている相手を Logger に出す。
*/
function listDestinationSharing() {
// フローの宛先にしようとしているフォルダの ID を並べる
const FOLDER_IDS = [
'DESTINATION_FOLDER_ID_1',
'DESTINATION_FOLDER_ID_2',
];
FOLDER_IDS.forEach((id) => {
let folder;
try {
folder = DriveApp.getFolderById(id);
} catch (e) {
// ID の打ち間違い・権限不足はここで拾う(フロー側では気づきにくい)
Logger.log('SKIP %s : %s', id, e.message);
return;
}
const access = folder.getSharingAccess(); // PRIVATE / DOMAIN / ANYONE など
const permission = folder.getSharingPermission(); // VIEW / EDIT / NONE
const editors = folder.getEditors().map((u) => u.getEmail());
const viewers = folder.getViewers().map((u) => u.getEmail());
Logger.log(
'%s | access=%s(%s) | editors=%s | viewers=%s',
folder.getName(),
access,
permission,
editors.length ? editors.join(', ') : '(なし)',
viewers.length ? viewers.join(', ') : '(なし)'
);
});
}見るのは一行だけです。access が PRIVATE 以外になっているフォルダ、あるいは editors に見覚えのないアドレスが混じっているフォルダは、自動移動の宛先から外します。判断そのものは十秒で終わりますが、この十秒を挟むかどうかで、あとから共有範囲を追いかける半日が生まれたり生まれなかったりします。
新機能が自分のドメインにまだ現れないときの切り分けは、Gemini の新機能が Workspace に出てこないとき、待ちと不具合を切り分ける順序にまとめてあります。共有そのものを絞りたい場合は、Drive を Gemini に見せたくないなら、共有を解除する前に試せる設定がありますのほうが近い話かもしれません。
Chat の返信に Markdown が通るようになりました
Send a Chat reply には Markdown のサポートが入り、太字や箇条書き、コードブロックがそのまま扱えるようになりました。個人開発で4つのサイトと2つの WordPress を回している身としては、監視や集計の結果をそのまま流し込みたくなります。
ただ、流し込めることと読まれることは別です。私は自分向けの通知でも、一行目に結論、残りをスレッドの中へ、という形に落ち着きました。コードブロックが通るようになった分、貼れてしまう情報の量が増えたぶんだけ、貼らない判断が必要になったのだと感じています。
Markdown が効くのは書式の見え方であって、読み手の集中ではありません——この当たり前を、私は何度か忘れかけました。
今日の一歩
まず管理コンソールで、四つのステップのトグルと「組織外へ渡りうる操作に承認を求める」設定の場所だけを見てきてください。フローを組むのはそのあとで十分に間に合います。Reply to email の機能提供は9月14日開始ですから、いまは設定を眺めるだけの時間が残されています。
私自身、この四つのうち三つはもう使い始め、一つは来週まで待つつもりでおります。同じように順番で悩まれた方の判断が、ほんの少し早くなれば嬉しく思います。