Drive のフォルダを開いたまま、しばらく手が止まりました。
個人開発の作業用フォルダには、ストア提出に使ったスクリーンショットのように外へ出してよいものと、請求書の控えのように出したくないものが、同じ階層に何年分も積み上がっています。そこへ「この四半期にやったことをまとめて」と Gemini に頼めば、当然ながら両方が視界に入ります。
最初に思いついたのは共有の解除でした。けれども共有を外すと、その相手が本来必要としていた閲覧まで一緒に消えます。調べ直してみると、共有はそのままで Gemini の取得対象からだけ外す方法があり、これは Workspace の管理者でなくてもファイルの所有者であれば今日から使えます。
Gemini が読める範囲は、Gemini 側の設定では決まっていません
順序を間違えると迷う場所なので、先にここを固めます。
Gemini は Workspace のデータに対して、その利用者と同じアクセス権で動きます。Drive であれば「自分に共有されているファイル」、カレンダーであれば「自分が閲覧できる予定」までが範囲です。自分が開けないファイルは Gemini も開けません。この点は Google の Gemini が Workspace のデータへアクセスする条件についての解説にも明示されています。
つまり「Gemini に見られたくない」という不安の実体は、多くの場合 Gemini の設定の問題ではありません。自分がアクセスできてしまう範囲が、自分でも把握しきれないほど広いという、その前段の問題です。
私自身、この順序を取り違えていました。Gemini 側で除外リストを探していたのですが、探すべき場所は Drive の権限のほうでした。
共有したまま外す — ダウンロード・コピー・印刷を無効にする
ファイルの所有者が「閲覧者と閲覧者(コメント可)に、ダウンロード・印刷・コピーの項目を表示する」をオフにすると、そのファイルは共有相手にとって読めるけれど持ち出せない状態になります。
ここで効いてくるのが、Gemini がこの制限を尊重する点です。共有されていても、所有者がダウンロード・コピー・印刷を許可していないファイルは、Gemini が応答を組み立てる材料として取得しません。共有関係を壊さずに、生成の入力からだけ外れます。
手順は Drive の画面で完結します。
- 対象のファイル、またはフォルダごと選んで「共有」を開きます
- 右上の歯車アイコン(設定)をクリックします
- 「閲覧者と閲覧者(コメント可)に、ダウンロード・印刷・コピーの項目を表示する」のチェックを外します
- 画面を閉じて、共有相手の一覧が変わっていないことを確認します
注意しておきたいのは、これが情報の秘匿ではないことです。画面に表示される以上、相手は目で読めますし、手で書き写すこともできます。防いでいるのは「持ち出しの導線」であって、閲覧そのものではありません。私はこれを、機密を守る壁ではなく、うっかり広い範囲を要約させたときに巻き込まれない仕切りとして使っています。
もうひとつ、フォルダ単位で設定した場合でも、後から追加したファイルの扱いは所有者が誰かで変わります。共同編集者が自分のファイルを置いた場合、その制限はそのファイルの所有者の設定に従います。定期的に見直す前提で運用するのが安全です。
3つの線引きを、誰が引けるかで並べてみます
同じ「Gemini に見せない」でも、使える手段は立場によって違います。混ざったまま検討すると、個人には手の届かない話ばかり読んで終わってしまうので、分けて並べます。
| 手段 | 設定できる人 | 効く範囲 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| アクセス権(共有設定) | ファイルの所有者・編集者 | 閲覧そのものを止める。Gemini からも当然外れる | 相手が必要としていた閲覧も同時に消える |
| ダウンロード・コピー・印刷の無効化 | ファイルの所有者 | 共有は維持したまま、Gemini の取得対象から外れる | 閲覧は止まらない。持ち出しの導線を塞ぐだけ |
| DLP for Gemini | Workspace 管理者 | ラベルや内容条件に一致した Drive のデータを、組織全体で対象外にする | 対象は現時点で Drive のみ。管理者権限が必要 |
個人アカウントや、管理コンソールに触れない立場であれば、実質的に上2つが持ち札になります。
管理者なら、ラベル単位で線を引けるようになりました
Workspace の管理者向けには、DLP for Gemini という仕組みが用意されました。内容条件とラベルにもとづいて、Gemini が Drive のデータへアクセスできる範囲を組織全体で制限するものです。詳細は Google のDLP for Gemini の解説ページにまとまっています。
押さえておきたい点を並べます。
- 対象となるサービスは、Gemini アプリ、Workspace 内の Gemini、Gemini Notebook、Workspace の Personal Intelligence、Workspace Studio の5つです
- チェックされるのは、Gemini が自分で見つけてきたデータ、利用者が明示的に指定したリソース、プロンプトの中に貼られたリンク先の3系統です
- 制限できるのは、現時点では Drive のデータのみです。ほかの Workspace データへの対応は今後の追加とされています
- 展開は Rapid Release ドメインが2026年8月20日から(機能が見えるまで最大3日)、Scheduled Release ドメインが9月1日からです
ラベル単位で線を引けることは、機能がひとつ増えたという以上の意味を持ちます。組織へ AI を入れるときに最後まで残る問いは「結局どこまで見えるのか」で、その答えを人間の運用ルールではなく設定として書けるかどうかが、導入の可否そのものを左右するためです。
個人と小規模チームでは、フォルダを分けることが実質の境界になります
管理者向けの仕組みが届かない場所では、結局のところフォルダの構造がそのままアクセスの境界になります。
私が最初にやったのは、機能の設定ではなく引っ越しでした。作業フォルダを「見せてよいもの」と「見せないもの」の2つに割り、後者を Gemini から見に行かせないフォルダとして固定しました。手順としては地味ですが、この一度の仕分けが効いた度合いは、細かい設定を積み上げたときの比ではありません。
10分ほどで終わる棚卸しの順序を書いておきます。
- Drive の検索窓で
type:pdfと入れて、PDF だけを新しい順に並べます。請求書・契約書・身分証の類は、この形式に集中しています - 見つかったものを、既存フォルダから独立した1つのフォルダへ移します
- そのフォルダの共有相手を確認します。覚えのないリンク共有が残っていれば、ここで切ります
- 業務上どうしても共有が必要なファイルには、前述のダウンロード・コピー・印刷の無効化をかけます
- 最後に Gemini へ「私の Drive にある請求書の金額を一覧にして」と聞いてみます。仕分け前と後で返ってくる内容が変われば、境界は効いています
5番目を必ず入れているのは、設定が効いているかどうかを設定画面で確認しても確信が持てないからです。実際に聞いてみて、返ってこないことを自分の目で見るほうが早く終わります。
会議のメモのように、これから増えていくファイルについては、置き場所を先に決めておくと後から仕分けせずに済みます。この観点はMeet のメモ機能が対面の打ち合わせに対応しました。先に決めるのは Drive の受け皿ですでも書きました。API 経由で送るデータの扱いが気になる場合は、Gemini API に送ったデータが学習に使われる条件と、有料枠でも例外になる操作のほうが目的に近い内容です。
今日ひとつだけ試すとすれば、Drive で type:pdf と検索してみてください。自分のアクセス権の広さが、数秒で目に見える形になります。そこから先の判断は、それを見てからで間に合います。
最後までお読みいただきありがとうございました。権限まわりは地味な作業が続きますが、一度引いた線は長く効いてくれます。