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開発ツール/2026-09-02中級

モデル入れ替えの合否を一致率で決めると、カテゴリ分布のずれは通過します

画像分類バッチのモデルを差し替えたとき、ゴールデンセットの一致率は通るのにカテゴリ構成比だけが動くことがあります。必要サンプル数を実際に計算し、切替前に判定できる対応比較のハーネスを組みました。

Gemini API229画像分類5バッチ処理9モデル移行13品質監視4

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並行運用していた分類モデルを本番側へ寄せた翌週、アプリの壁紙一覧で上のほうに出てくるカテゴリの顔ぶれが少し変わっていました。

個々の分類が誤っているわけではありません。1枚ずつ目で見れば、どれも納得できる割り当てです。それでも「風景」の棚が少し厚くなり、下のほうにある小さなカテゴリが痩せていました。

切り替えの判断には、手元のゴールデンセットに対する一致率を使っていました。新旧のモデルで同じ画像に同じカテゴリが付く割合です。そこは通っていました。通ったうえで、構成比だけが動いていたわけです。

この記事は、その「通ってしまう」構造を数字で押さえ直し、切替前に気づける形へハーネスを組み替えるまでの記録です。統計まわりの数値は、実運用の分布を模した 30 カテゴリの偏った分布を手元で組み、シミュレーションで求めたものです。運用側の課題のほうは、個人開発で回している壁紙アプリのカテゴリ分類バッチで実際に踏んだものです。配信面は App Store と Google Play の両方で、一覧の並びはどちらも同じ分類結果から組み立てています。片方だけで確かめても意味がない、という前提がこのあとの設計に効いてきます。

一致率 92% が隠していたもの

まず、一致率と構成比が別物であることを数字で確かめました。

30 カテゴリ、構成比は Zipf 的に偏った分布(1位 19.8%、2位 11.1%、3位 7.8%、下位20カテゴリの合計 32.7%)を用意します。そこへ「新モデルは 92% の確率で旧モデルと同じ札を出し、食い違った 8% のうち 7 割は上位3カテゴリのどれかへ流れる」という混同のしかたを与えました。誤りが一様に散らばるのではなく、優勢なカテゴリへ吸われる形です。20万件で回した結果がこちらです。

カテゴリ旧モデル新モデル相対変化
1位19.78%21.18%+7.1%
2位11.06%11.87%+7.3%
3位7.80%8.40%+7.7%
4位6.13%5.71%-6.9%
下位20の合計32.73%31.72%-3.1%

実効一致率は 91.9%、総変動距離(TVD)は 2.81% でした。

一致率だけを見るゲートは、しきい値を 90% に置いていれば当然のように通します。それでも上位カテゴリは 7% 太り、下位20カテゴリはまとめて 3% 痩せています。一覧の並び順や「新着」の見え方は、この数%で変わります。

一致率は「何件ずれたか」を数えます。構成比のずれは「ずれた分がどこへ行ったか」で決まります。前者が後者を含まないのは考えてみれば当たり前なのですが、ゲートを一本にまとめたときにこの区別が落ちていました。

本番の分布を後から見張る方式は、気づくのが遅すぎます

では、切り替えたあとに本番の出力分布を監視すればよいのか。ここが今回いちばん予想と違ったところです。

30 カテゴリの構成比が基準からずれたかを、カイ二乗適合度検定(自由度29、有意水準5%、臨界値 42.557)で見張る設計を仮定して、上の TVD 2% 弱のドリフトに対する検出力を求めました。

判定に使う件数検出力
5009.5%
1,20019.2%
2,00039.8%
4,00079.2%

1日あたり数百枚を処理するバッチだと、4,000 件を貯めるまでに1〜2週間かかります。そのあいだ検出力は 20% 前後で、つまり「異常なし」という表示のほとんどが、異常がないことではなく件数が足りないことを意味していました。

カテゴリを1つに絞った比率検定なら効くだろうと考えて、そちらも測りました。

件数1位カテゴリ(19.78%→21.18%)3位カテゴリ(7.80%→8.40%)
1,80031.4%16.7%
3,00047.6%24.0%
6,00076.8%41.8%
15,00076.3%

一括検定よりは効きますが、桁は変わりません。構成比 7.8% のカテゴリを見張るには 15,000 件が要ります。

理由は分散の出どころにあります。本番の分布を観測する方式では、揺れの大半が「そもそもどんな画像が入ってきたか」から来ます。モデルの差はその上に乗った薄い層で、入力の揺らぎに埋もれます。件数を積む以外に埋もれから抜ける手立てがありません。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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この記事で得られること
一致率のゲートを通ったモデル入れ替えでも、カテゴリの構成比が動いていないかを本番へ寄せる前に確かめられるようになります
分布のずれを本番の観測で追うのか、同じ入力を新旧へ流して比べるのかを、必要サンプル数という根拠から選べるようになります
30カテゴリの一括検定が 4,000 件でも検出力 79% どまりになる理由がわかり、監視を「検定の粒度」から設計し直せるようになります
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