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◈ API / SDK/2026-06-15上級

既定モデルが勝手に上がる時代に、プロンプト変更の劣化を数値で捕まえる — バリアント管理とカナリア評価の実装メモ

Gemini 3.5 Flash が既定に上がり、無効化もできなくなりました。プロンプトを触っていないのに応答が変わる前提で、バリアントを束ねて管理し、カナリアと LLM-as-judge で劣化を数値として捕まえる仕組みを、動くコードで組み立てます。

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✦ プレミアム記事

先日、Gemini 3.5 Flash が一般提供になり、Enterprise 系のアプリでは既定モデルとして有効化され、無効化トグルまで消えました。私はこの知らせを読みながら、半年ほど前に味わった気味の悪い半日を思い出していました。個人開発でチャット系のアプリを運用していたのですが、プロンプトは一文字も変えていないのに、ある朝から一部のユーザー層だけ応答のトーンが妙に硬くなった。ログを追っても変更履歴は空っぽで、原因にたどり着くまでに午前中がまるごと溶けました。

結論から言えば、背後でモデルのチェックポイントが入れ替わっていた、というのが私の推測です。確証は取れませんでした。確証が取れない、という事実こそが問題でした。プロンプトを「いつ・誰が・なぜ変えたか」しか記録していなかったので、モデル側が動いたときに切り分ける物差しが手元になかったのです。

「触っていないのに変わる」を前提に計測を組む

既定が 3.5 Flash に上がり、しかも無効化できないということは、API を指定なしで叩いている自動化にとって「ある日から挙動が変わる」が制度として起こるということです。これは事故ではなく仕様の側の話なので、こちらの設計で受け止めるしかありません。

受け止め方は一つだけです。応答を生む条件を毎回スナップショットとして固定し、その条件ごとに品質を継続計測する。チャットのように正解が一つに定まらないワークロードでは、ユニットテストが「エラーは出ていない」以上のことを教えてくれません。エラーゼロのまま品質だけが沈んでいく劣化を、テストは素通りさせます。だからこそ、プロンプトを明示的な「バージョン」として扱い、本番トラフィックの上で複数版を並走させながら数値で比べる仕組みが要ります。

ここで私が強く勧めたいのは、版管理の単位を「プロンプト文字列」にしないことです。プロンプトだけ版を切っても、裏でモデルやサンプリングパラメータが独立に動くと、計測した差がどの要因のものか永遠に確定できません。版管理の単位は「プロンプト + モデルID + サンプリング設定」を一つに束ねたバリアントにします。これが本稿の背骨です。

全体像 — 4つの部品と、shadow を挟む理由

組み上げるのは次の4つです。

Prompt Registry は、バリアントを Firestore のドキュメントとして持つ小さなレジストリです。配信中か、控え室にいるか、退役したかを status で制御します。Traffic Splitter は、ユーザーIDとタスクキーから決定論的にバリアントを選ぶロジックです。同じ人には常に同じ版が返るので、比較が途中で崩れません。Metrics Collector は API 呼び出しを包む薄いラッパーで、どのバリアントが、どれだけのレイテンシとトークンで、成功したか失敗したかを必ず1レコード残します。Evaluation Loop は、溜まったログをサンプリングして審判モデルで採点し、バリアント別の平均スコアの差を見る評価バッチです。

設計上のいちばんの工夫は、status に active と shadow を分けて持たせることです。active は実トラフィックに出ますが、shadow は出しません。控え室に置いたまま、少数のサンプルでオフライン採点だけ回します。いきなりユーザーに当てる前に「この版は明らかに弱い」を捨てられる関所を持っておくと、本番投入の事故がはっきり減ります。私はこの関所を入れてから、新バリアントを当てる手つきがずいぶん大胆になりました。

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✦プロンプト・モデル・サンプリングを1つの「バリアント」に束ね、決定論ハッシュで安定した割り当てを作る Firestore レジストリの実装
✦新バリアントを shadow → カナリア → 昇格の3段で進め、最低サンプル数を満たすまで勝ち判定を凍結する運用ルール
✦応答より一段強い gemini-3-pro を審判に使い、回帰を平均スコア差と簡易 z 値で検知する評価バッチのコード
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