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◈ API / SDK/2026-07-18上級

同じ gemini-flash-latest が、リージョンごとに違うモデルを指していた — 比較値が汚れる数日間の見つけ方

エイリアスの解決先はリージョン単位でロールアウトされます。同じ gemini-flash-latest を東京と us-central1 に投げると、数日だけ別のモデルが応答する。その間の比較値が無効になる理由と、1発のプローブで検知して比較を凍結する設計をまとめます。

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同じプロンプト、同じコード、同じ SDK バージョン。違うのはリージョンだけ。それなのに asia-northeast1 と us-central1 で返ってくる文章の長さが、目に見えて違っていました。

7 月 15 日、gemini-flash-latest の実体が Gemini 3.5 Flash に切り替わった直後のことです。私は個人開発のアプリで、日本のユーザー向けに東京リージョン、それ以外に us-central1 という素朴な振り分けをしていました。二度書くのが重複に思えて、両方に同じエイリアスを書いていた。それが数日間だけ、別々のモデルを指していたのです。

厄介だったのは、壊れなかったことでした。どちらのレスポンスも正常で、JSON も通る。ただ、その週に取った「東京の方が速い」「英語の出力が少し短い」という観測値が、後から全部使えないものになりました。測っていたのはリージョン差ではなく、モデル差だったからです。

エイリアスは「グローバルな別名」ではない

gemini-flash-latest のようなエイリアスを、私は長いあいだ「どこから呼んでも同じ実体に解決される、グローバルなショートカット」だと思い込んでいました。実際には違います。エイリアスは、そのリージョンにおける現在の推奨版を指すローカルな別名です。

新しいバージョンが GA になると、ロールアウトはリージョンごとに順次進みます。全リージョンが同時に切り替わるわけではありません。つまりエイリアスは、次の 3 つを同時には保証しません。

期待していたこと実際
いつ呼んでも同じ実体ロールアウト時に予告なく切り替わる
どこから呼んでも同じ実体リージョンごとに解決先がずれる期間がある
切り替わったら通知されるレスポンスを見に行かない限り分からない

1 番目は比較的よく知られています。私が取りこぼしていたのは 2 番目でした。バージョン固定という対策は 1 番目にしか効きません。エイリアスを残したまま複数リージョンに展開している箇所には、まったく効いていなかった。

幸い、どのモデルが実際に応答したかはレスポンスが教えてくれます。model_version がそれです。

# 何を解決するコード: エイリアスで呼んだとき、実際にどの具体バージョンが
# 応答したのかをリージョンごとに確認する。ここが一致していない期間は、
# リージョン間の比較値がモデル差に汚染されています。
import os
from google import genai
 
def resolve(location: str, alias: str = "gemini-flash-latest") -> str:
    client = genai.Client(
        vertexai=True,
        project=os.environ["GOOGLE_CLOUD_PROJECT"],
        location=location,
    )
    res = client.models.generate_content(
        model=alias,
        contents="ok",  # 解決先を知るだけなので最小の入力にします
    )
    return res.model_version
 
for loc in ("asia-northeast1", "us-central1"):
    print(f"{loc:16s} -> {resolve(loc)}")

出力の一例です。

asia-northeast1  -> gemini-3.5-flash
us-central1      -> gemini-3.1-flash

この 2 行を見た瞬間に、その週の計測ノートを閉じました。contents を "ok" の 2 文字にしているのは意図的で、解決先さえ分かればよいので入力トークンを増やす理由がありません。1 回あたりの入力は数トークン、gemini-3.5-flash の入力単価は 100 万トークンあたり 1.50 ドルですから、1 日 2 リージョン分を回しても費用は事実上ゼロです。

スキューが汚すのは、比較値だけではない

解決先がずれている期間に何が壊れるのか。整理してみると、被害は 3 方向に分かれました。

比較とカナリア。 リージョン A と B の出力を突き合わせる設計は、両者が同じモデルであることを暗黙の前提にしています。前提が崩れた期間のデータは、差分の原因を切り分けられません。

レイテンシの指標。 「東京の方が p95 が 200ms 速い」— ネットワーク距離の話だと思って読みますが、世代の違うモデルが混ざっていれば、それは推論時間の差かもしれません。

キャッシュ。 これが一番静かに効きました。私はレスポンスキャッシュのキーを alias + プロンプトのハッシュ で作っていたのです。東京で gemini-3.5-flash が生成した結果が gemini-flash-latest という名前で保存され、us-central1 のリクエストがそれを引く。リージョンをまたいだキャッシュ共有をしている場合、別のモデルの出力を、そのモデルの出力として配ってしまいます。

キャッシュキーの修正は 1 行で済みました。名前ではなく、応答した実体を鍵に混ぜます。

# 何を解決するコード: キャッシュキーにエイリアス名ではなく、実際に応答した
# 具体バージョンを埋め込む。これでロールアウト中に別モデルの出力が
# 同じキーに同居することを防げます。
import hashlib
 
def cache_key(model_version: str, prompt: str) -> str:
    # model_version は res.model_version(例: "gemini-3.5-flash")。
    # alias("gemini-flash-latest")を使うと、解決先が変わった瞬間に
    # 古い実体の出力を新しい実体の出力として配ることになります。
    digest = hashlib.sha256(prompt.encode("utf-8")).hexdigest()[:32]
    return f"{model_version}:{digest}"

書き込み時に model_version が手元にあるのは自明ですが、読み込み時にはまだ応答していないので分かりません。ここは素直に「読み込み側は、そのリージョンの解決先を 1 日 1 回だけ確認して使い回す」で足りています。厳密さより、別モデルの出力が混ざらないことの方が大事でした。

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この記事で得られること
✦エイリアスの解決先がリージョン単位でずれる仕組みと、ずれている数日間に取った比較値がなぜ丸ごと無効になるのか
✦各リージョンへ1発だけ投げて model_version を突き合わせる、依存ライブラリなしのスキュー・プローブ実装
✦スキュー検知中だけ比較を凍結する運用フラグと、キャッシュキーからエイリアス名を外すための設計変更
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