月末の朝は、コードの中のモデル ID を数える日にしています。個人開発している壁紙アプリの画像分類に Gemini を組み込んでから、モデルやエンドポイントの「賞味期限」は、切れる前に自分から見に行くものになりました。過去に StoreKit 2 や Firebase SPM の移行を期限ぎりぎりで片付けて消耗した経験があるので、締切のある作業だけは月に一度の棚卸しで先回りする、と決めています。
今日 2026年8月31日は、その棚卸しの結果をそのまま共有できる日です。gemini-robotics-er-1.6-preview が本日をもってシャットダウンされ、次の期限として、9月30日の gemini-omni-flash-preview エンドポイント廃止が控えています。年末には価格の節目もあります。順番に見ていきます。
まず期限表 — 8月17日から12月31日まで
結論を先に置きます。2026年8月末時点で把握しておきたい Gemini 関連の期限は、次の5行に収まります。
| 期日 | 対象 | 何が起きるか | とるべき対処 |
|---|---|---|---|
| 2026年8月17日(停止済み) | imagen-4.0-generate-001 / -ultra / -fast | すでに停止しています | 呼び出しが残っていれば、その箇所は今も失敗し続けています。即時の差し替えが必要です |
| 2026年8月31日(本日) | gemini-robotics-er-1.6-preview | シャットダウン | gemini-robotics-er-2-preview 系へ移行します |
| 2026年9月30日 | gemini-omni-flash-preview | エンドポイント廃止 | GA 版の gemini-omni-1.1-flash へ差し替えます |
| 期日なし(進行中) | temperature・top_p・top_k | 非推奨。3.x Flash 系は受理したうえで無視します | 指定箇所を洗い出し、出力制御をシステム指示側へ移します |
| 2026年12月31日 | Gemini 3.7 Flash の導入価格 | 期間限定価格が終了します | 月次のトークン実績に標準価格を掛け直し、来年のコストを試算しておきます |
この表で急ぐのは上の3行です。下の2行は今日壊れるものではありませんが、放置すると気づかないまま前提が変わっていくたぐいのもので、性質としてはむしろ厄介です。
今日で止まった gemini-robotics-er-1.6-preview
ロボティクス向けの実験モデル gemini-robotics-er-1.6-preview は、7月30日の告知から約1ヶ月の猶予を経て、本日シャットダウンされました。preview 接尾辞のモデルなので驚く話ではありませんが、実験コードをそのまま置いていた場合、今日を境に動かなくなります。
後継は同日に公開プレビューへ出た gemini-robotics-er-2-preview と gemini-robotics-er-2-streaming-preview です。空間推論や多段のツール連携、動画内の該当場面の特定などが強化されており、streaming 版は Live API 上の双方向入力に対応します。ただし後継も preview である点は変わりません。つまり、いま移行しても、いずれまた同じ形の期限が設定されます。
私がこの1年で学んだのは、preview 接尾辞のモデルは「GA 版が出た瞬間に廃止日が決まるもの」として扱う、という前提の置き方です。8月27日に GA が出て9月30日に preview が閉じる、という次の Omni の事例が、ちょうどその間隔の実例になっています。
9月30日 — gemini-omni-flash-preview から gemini-omni-1.1-flash へ
動画生成・編集モデルの Omni Flash は、8月27日に gemini-omni-1.1-flash として GA になりました。これに伴い、プレビュー版の gemini-omni-flash-preview エンドポイントは9月30日に廃止されます。猶予はちょうど1ヶ月です。
差し替え自体は、多くの場合エンドポイント名の置換で済みます。ただし2点だけ確認をおすすめします。
1点目は既定解像度です。GA で resolution パラメータが明示され、360p・720p(既定)・1080p・4k を選べるようになりました。1080p と 4K はアップスケールによる出力だと明記されています。プレビュー時代の暗黙の挙動に依存していた箇所は、既定値が明文化されたことで受け取るファイルサイズや見え方が変わる可能性があります。アップスケールをどちら側で担うかという論点は、Omni Flash の 4K を API 側で受け取るか、配布直前に自分で上げるかで掘り下げています。
2点目は、GA で増えた機能を移行のついでに使うかどうかの判断です。既存クリップの末尾に続きを生成する extend と、image_to_video に画像を最大2枚渡して間を補間する interpolation が加わりました。移行作業と新機能の検証を同じコミットに混ぜると、挙動が変わったときの切り分けが難しくなります。私なら、まず名前の置換だけで9月中旬までに動作確認を終え、新機能は別の作業として切り出します。
期日が書かれない非推奨 — temperature・top_p・top_k
表の4行目は、期日がないぶん見落としやすい変更です。サンプリングパラメータの temperature・top_p・top_k は非推奨になりましたが、3.x Flash 系のモデルはこれらを受理したうえで無視します。リクエストは 200 で通り、警告も出ません。
エラーが出ない変更は、締切のある変更より対処が後回しになりがちです。それでも temperature: 0 を前提に決定的な出力を期待している処理があるなら、前提はすでに崩れています。まずはコードベースで指定箇所を検索して、使っているモデル ID と突き合わせるところからです。実際にこの非推奨で困った経験は、temperature 非推奨で先に困ったのは、決定性ではなく多様性の側でしたに書いています。
月次棚卸しの最小の型
期限のたびに個別対応するより、探し方を1つ決めて毎月同じ手順を回すほうが、結果として手数が減ります。私の手順は3ステップだけです。
| 手順 | やること | 所要の目安 |
|---|---|---|
| 1. 列挙 | コードベースからモデル ID とエンドポイント指定を機械的に洗い出します | 約5分 |
| 2. 突き合わせ | 洗い出した ID を公式の廃止情報と照合し、期日つきのものに印を付けます | 約10分 |
| 3. 予約 | 廃止日の30日前にカレンダーへ着手日を入れます | 約2分 |
列挙は、たとえば次の1行で十分です。
grep -rnE "gemini-[a-z0-9.-]+|imagen-[a-z0-9.-]+" src/ --include="*.swift" --include="*.kt"-preview を含む ID が出てきたら、それが最優先の確認対象です。着手日を「廃止日の30日前」に置くのは、App Store の審査や段階公開を挟むと、差し替えが全ユーザーへ届くまでに思ったより日数を食うからです。私自身、この30日という余白に Gemini 以外の SDK 移行でも何度も救われてきました。
9月を迎える前の、今日の一手
今日やることは1つで構いません。上の grep を自分のリポジトリで1回実行し、-preview を含む ID が出るかどうかを見るだけです。出なければ9月30日の期限はあなたには関係なく、出たなら移行先はすでに GA で待っています。
なお、廃止日をまたいでも古い端末からのリクエストは残り続けます。それをサーバー側で黙って新モデルへ読み替える運用の危うさと、拒否を返す側の設計は、プレミアム記事モデル廃止日をまたぐ古い端末に、読み替えではなく拒否を返す設計で実装まで含めて扱っています。月末の棚卸しのお供になれば幸いです。