壁紙アプリのユーザーさんから、英語の問い合わせが届いた日曜の朝のことでした。ロック画面に設定すると絵が少しずれて見える、という内容です。
返信の叩き台を Gemini アプリに頼むと、丁寧な英文がすぐに返ってきました。お詫び、原因の見立て、そして iPhone の設定で試していただきたい操作が一つ添えられていました。そのまま貼り付けて、送信ボタンに指をかけたところで手が止まりました。
設定画面の場所を書いた一文を、私は自分の端末で一度も確かめていなかったのです。
念のために回答の下のメニューからダブルチェックを押してみると、まさにその一文だけがオレンジに塗られていました。手元の iPhone で辿り直すと、書かれていた場所は一段階ずれていました。送っていたら、困っている方をもう一度迷わせるところでした。
ダブルチェックは、回答の下のメニューから一度押すだけです
ダブルチェックは、Gemini の回答に含まれる文を Google 検索の結果と照らし合わせて、色で示してくれる機能です。特別な設定はいりません。
- Gemini アプリ(ブラウザ版またはスマートフォンのアプリ)で、確かめたい回答を表示します
- 回答の下に並ぶアイコンの中から、その他のメニュー(︙)を開きます
- Google 検索で回答を確かめる項目を選びます。表示名は「ダブルチェック」「回答を再確認」など、画面や時期によって少し変わることがあります
- 数秒待つと、回答の一部の文に色が付きます
- 色の付いた文をタップすると、照合に使われた検索結果が開けます
仕事用や学校用のアカウント、あるいは言語の設定によっては、この項目が出てこないこともあります。見当たらないときは、個人のアカウントで同じ質問をしてみると確かめやすいのです。
緑・オレンジ・色なしが示しているもの
色の意味は三つだけです。ただ、私は最初「緑は正しい、オレンジは間違い」と覚えてしまい、それが遠回りの原因になりました。
| 表示 | Google 検索で起きたこと | 私の扱い方 |
|---|---|---|
| 緑 | 似た内容を述べているページが見つかった | リンク先を開き、日付と書き手だけ確かめる |
| オレンジ | 食い違う内容が見つかった、または関連するページが見つからなかった | 送る前に必ず自分の手で確かめ、直すか削る |
| 色なし | 評価できるだけの情報がない、または事実を述べる文ではない | 数字・固有名詞・手順が含まれていれば、オレンジと同じに扱う |
オレンジには「間違っている」と「確かめようがなかった」の二つが混ざっています。そして色なしは「問題なし」ではありません。挨拶やお詫びの文が色なしになるのは自然ですが、手順や数字が色なしのまま残っているなら、それは検索でも裏が取れなかったという合図なのだと思います。
オレンジの一文を見直す順番
オレンジが付いたとき、Gemini に「これは正しいですか」と聞き直したくなります。私も最初はそうしておりました。ただ、同じ相手に確認を求めても、言い回しを変えて同じ内容が返ってくることが多く、あまり芳しくありませんでした。
いまは次の順番で片付けています。
- オレンジの文をタップして、照合に使われたページを開きます。食い違いの中身がそこで分かることが多いのです
- その文が「世間の事実」なのか「自分の製品や手元の状況の事実」なのかを分けます
- 世間の事実なら、公式のヘルプや一次情報のページで確かめ、正しい内容に書き換えます
- 自分の製品や手元の状況の事実なら、検索では確かめようがありません。実機や管理画面で自分が辿り、その結果で書き直します
- 確かめきれなかった文は、思い切って削ります。返信文は一文減っても伝わりますが、誤った一文は取り消せません
冒頭の問い合わせでは、四番目でした。私のアプリの画面や、特定の iOS の画面遷移は、検索で照合できる情報がそもそも少ないのです。オレンジが付いたのは、Gemini が嘘をついたというより、検索で確かめようのない内容だったからでした。
緑でも、そのまま信じないほうがよい場面
逆に、緑でも手を止める場面があります。私が気をつけているのは三つです。
一つ目は、日付が絡む文です。料金、提供状況、対応バージョン——こうした内容は、古いページと一致して緑になることがあります。リンク先の更新日を見るだけで、たいていの取り違えは防げます。
二つ目は、リンク先が一次情報でない場合です。まとめ記事同士が同じ誤りを写し合っていると、検索では「一致」に見えてしまいます。公式のヘルプか、提供元の発表まで辿れるかどうかを見ています。
三つ目は、自分の製品についての文です。自分のアプリの仕様や、自分が運用しているサイトの設定は、世の中の誰よりも自分がいちばん詳しいはずです。そこに緑が付いていても、根拠になっているのは他人のページにすぎません。
世間の事実は検索で、自分の製品の事実は自分の手で。 ダブルチェックは前者を速くしてくれる道具で、後者を肩代わりしてくれるものではない、と線を引いております。
送信前の三十秒を習慣にするまで
習慣にするには、確かめる範囲を最初から狭く決めておくのがいちばん効きました。全文を読み直そうとすると続かないからです。私は返信を送る前に、次の四行だけを見るようにしています。
[送信前チェック]
1. ダブルチェックを押した(押せない画面なら、手順・数字・固有名詞に自分で印を付けた)
2. オレンジの文を、直したか削った
3. 色なしの文のうち、手順・数字・固有名詞を含むものを確かめた
4. 緑の文のうち、日付が絡むものはリンク先の更新日を見たこの四行をメモアプリに置いておき、送信の直前に上から指でなぞります。慣れてくると三十秒ほどで終わり、その三十秒で防げる取り違えが、思っていたより多いのです。
なお、分類やタグ付けのように「Gemini の判断そのもの」を確かめたい場面では、検索との照合とは別の考え方が要ります。確認を求める聞き方をやめて答えを伏せたまま判断し直してもらう設計は、Gemini に「合っていますか」と聞くのをやめ、答えを伏せたまま分類し直してもらう設計で詳しく書き残しました。仕組みとして組み込みたい方の参考になれば幸いです。
まずは次に Gemini で下書きした返信を送る前に、一度だけメニューからダブルチェックを押してみていただければと思います。オレンジが一つも出なければ、それはそれで安心して送れます。私はあの日曜の朝から、この一手間だけは省かずに続けております。