受託でサイトを作らせていただいている先方から、打ち合わせの資料が PDF で届いた金曜の夕方のことでした。スキャンした紙と画面のキャプチャが混ざった、ページ数だけがやたらに多い一本です。
要点だけ先に拾っておきたくて、そのまま Gemini アプリに投げました。返ってきたのは、私が期待していた要約ではありませんでした。
そこで私が最初に手をつけたのは、分割でした。半分にして、噛み合わず、また半分にして、四分の一でようやく答えらしいものが返ってきました。三十分ほどかけた遠回りでした——後から公式のヘルプを読み直して、分ける必要などほとんど無かったと知りました。
同じ「大きすぎます」でも、当たっている壁が違います
Gemini アプリがファイルを断ってくるときのメッセージは、公式ヘルプの中で三つに分かれています。日本語表示では文言が少し変わりますが、意味は同じです。
| 表示されるメッセージ | 当たっている上限 | 分割は効くか |
|---|---|---|
| Delete data to upload file(アップロードするにはデータを削除してください) | Gemini アプリ側の保存容量。過去のチャットとアップロード済みファイルの蓄積で、Google ドライブの容量とは別勘定です | 効きません |
| You've reached your limit for chats with files(ファイル付きチャットの上限に達しました) | 一定時間あたりの回数。時間が経てば戻ります | 効きません(むしろ回数を消費します) |
| Your uploads may be too large for the best results(アップロードが大きすぎる可能性があります) | 一度に読める量=コンテキストウィンドウ。ファイル自体は受け取られています | 効きますが、先にもっと効く手があります |
私がぶつかっていたのは三つ目でした。ファイルは受け取られていて、読み切れていないだけだったのです。手元では「うまく読めていない」としか見えないので、一つ目や二つ目と見分けがつきません。私が遠回りをしたのも、ここを読み飛ばしていたからなのだと気づいたのは、ずいぶん後になってからでした。
断られ方が同じでも、直し方は三つに分かれます。 メッセージの文言を最後まで読むところから始めると、それだけで手数が減ります。
入る大きさと、読める大きさは別の話です
入口の上限は、思ったより緩いのです。公式ヘルプによれば、一つのプロンプトに添えられるファイルは10件まで、動画は 2GB まで、それ以外のファイルは 100MB までとなっています。100MB の PDF なら、そもそも入口では断られません。
ところが、読める量のほうは契約プランで大きく変わります。
| プラン | コンテキストウィンドウ | 公式換算の目安 |
|---|---|---|
| Google AI プランなし | 32,000 トークン | ごく短い資料まで |
| Google AI Plus | 128,000 トークン | その4倍 |
| Google AI Pro / Ultra | 1,000,000 トークン | テキストで約 1,500 ページ、コードで約 30,000 行 |
公式が挙げている換算は 100万トークンのところだけですので、そこから素直に割り戻すと、プランなしの 32,000 トークンはテキストで数十ページぶんに相当します。100MB のファイルが入る入口と、数十ページしか読めない窓が、同じアプリの中に並んでいるわけです。
入る大きさと、読める大きさは別の上限です。 私が分割を繰り返して手応えを得たのは、偶然この窓に収まる厚みまで削れたから、というだけのことでした。同じ資料を Pro のアカウントで開いていたら、そもそも何も起きなかったのかもしれません。
もう一つ、順番が逆に見える仕様があります。Ultra の Deep Think は最大の並列推論を行う機能ですが、窓は 192,000 トークンです。上位の機能に切り替えたとたんに、読める量だけは狭くなります。厚い資料を渡したまま Deep Think を選ぶと、通常の応答より取りこぼしが増えることになるのです。
プラン選びから迷っていらっしゃる方は、Gemini 無料版 vs Pro vs Ultra — あなたに合ったプランの選び方2026年版 も併せてご覧ください。
分ける前に削る、私の5手順
窓に収まらないのであれば、収まる量まで減らすのが先です。私が受託資料でいつも通す順番を書き残します。上から順に効きます。
- 表紙・目次・改訂履歴・空白ページ・奥付を落とします。 体裁のためのページは、問いに答える材料をひと言も持っていません。届いた資料では、これだけで 2 割ほど減りました。
- 今回の問いに関係のない章を外します。 付録と参考資料は別ファイルに逃がします。捨てるのではなく、後で必要になったときに渡せる形にしておくのが要点です。
- 同じ図版を高解像度で何度も貼っているページを間引きます。 スキャンした紙のページは、文字だけのページよりずっと多くの量を食います。画像中心の資料が思いのほか早く窓を埋めるのは、ここが効いているように感じています。
- スキャンで渡さずに済む部分は、文字で渡します。 手元でテキストとして持っている仕様や議事録は、PDF に固める前の形のまま貼ったほうが、はるかに軽く通ります。
- 「全部読んで」をやめて、問いを先に決めます。 資料の量ではなく、答えてほしいことの数を減らすほうが、結果は安定します。
私の場合、打ち合わせメモと仕様の章だけを残した時点で、分割せずにそのまま通りました。四分の一に切り刻んだ夜にやっていたのは、削るべきものを削らないまま、量だけを均等に分ける作業だったのです。
それでも分けるときの、分け方を決めておきます
資料そのものが大きい場合は、もちろん分割が要ります。そのときページ数で等分しないことだけ決めておくと、後が楽になります。
章の切れ目で分けて、一つのファイルに一つの主題だけを入れます。等分すると、一つの話が二つのファイルにまたがって、どちらを渡しても答えが出ない、という状態が生まれます。
私は目次のページだけを先に渡して、当たりをつける進め方をよく使います。
この目次だけを見て、次の問いに答えられそうな章を3つまで挙げてください。
答えられないと判断した場合は、その理由も1行で書いてください。
問い: 初回リリースに含める機能と、次期リリースに回す機能の線引きはどこか返ってきた章だけを渡し直せば、窓を心配せずに済みます。資料を作った本人ではない読み手にとって、どの章に何が書いてあるかを最初に掴めるという副作用のほうが、実のところありがたく感じています。
200ページ級の資料を継続的に扱う必要がある場合は、Gemini 2.5 Pro で 200 ページの契約書を読む — 長文読解を業務品質に押し上げる 5 つの工夫 のような、章ごとに読ませて突き合わせる設計に移していくことになります。
上限に当たった日に、私が見る順番
保存容量や回数のほうに当たっていた場合は、削っても状況は変わりません。順番を決めておくと、切り分けが一往復で済みます。
- 設定から使用量の上限を開きます。 Gemini アプリの設定に使用量の上限の画面があります。上限は5時間ごとに戻り、その上に週単位の上限が乗っています。ここを見れば、待てば戻るのかどうかがすぐ分かります。
- 保存容量のメッセージだったら、アクティビティから古いチャットを消します。 設定のアクティビティから、ファイルを添えた過去のチャットを消します。反映に数分かかりますので、消してすぐ再試行して同じ表示が出ても、少し待ってからもう一度試してみてください。
- 会社や学校のアカウントは、自分では消せません。 Workspace アカウントの Gemini アプリのアクティビティを削除できるのは管理者だけです。個人アカウントの手順をいくら辿っても進みませんので、早めに管理者へ相談なさるのが近道です。
- どれでもなければ、削る手順に戻ります。 公式ヘルプには、解析に失敗した旨のエラーが出た場合は再アップロードを試すよう書かれています。一度だけ試して、変わらなければ資料のほうを減らします。
同じ形の切り分けは、Gemini の他の機能でも役に立ちます。上限に見えて置き場所が原因だった例は Sheets の AI 関数が生成できないとき、上限より先に置き場所を疑う に書きました。Drive 上の資料を渡している場合に、直したはずの原稿が古いまま返ってくる件は Drive の原稿を直して聞き直したら、Gemini が直す前の文を返してきました が該当します。
今日、手元のいちばん厚い一本で試すこと
いま手元にある、いちばんページ数の多い PDF を開いてみてください。そして、上の5手順の1番だけ——表紙・目次・改訂履歴・空白ページ——を数えてみていただければと思います。
私が数えたときは、答えに何も寄与しないページが二割近くありました。分割の判断をするのは、そこを落としてからで遅くないのです。
手順の裏付けは公式ヘルプの Gemini アプリでファイルをアップロードして分析する と Google AI 契約者向けの Gemini アプリの上限とアップグレード にあります。上限の数値は予告なく変わることが明記されていますので、迷ったときはこの2本に戻るのが確実です。
厚い資料を前にした夕方に、この順番が一度でも手数を減らしてくれましたら、書いた甲斐があります。