ストアの返信文を下書きしてもらっていた夕方のことです。壁紙アプリ向けのつもりで書かせた一文に、前の日に相談していた別のアプリ——ヒーリング音源のほう——の機能名が、さも当然のように混ざっておりました。
指示文には、そのアプリの名前を一度も書いておりません。それでも Gemini は覚えていました。
会話を新しく開き直しても、同じことが起きました。参照されているのは「いまの会話」ではないのだと気づいたのは、三度目に同じ混ざり方をしたあとでした。
最初にお伝えしたいのは、これが不具合ではなく、設定どおりの動作だという点です。そして私がつまずいたのは、消したつもりの情報が消えていない経路が、もう一本あったことでした。
過去のチャットを参照しているのは「メモリー」という設定です
Gemini アプリには、過去のチャットを参照して回答をパーソナライズする機能があります。パソコンなら gemini.google.com の画面下部にある「設定とヘルプ」から「パーソナル インテリジェンス」を開くと、メモリーのオン・オフが並んでいます。
この機能が動くには、条件が揃っている必要があります。私は自分の環境を一つずつ確かめました。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 年齢 | 18 歳以上であること |
| アカウント | 個人の Google アカウント。仕事用・学校用・管理対象のアカウントでは利用できません |
| アクティビティ | 「アクティビティの保存」がオンであること。オフだとこの機能は使えません |
| 使える場所 | Gemini モバイルアプリ、ウェブ版、Gemini in Chrome、スマートウォッチの Gemini |
| 使えない場所 | Gem や Gemini Live の会話。ただしテキスト入力で過去の Live 会話を参照するよう頼むことはできます |
条件を読んで、まず腑に落ちたことがありました。私が混ざりを起こしていたのは、いつも素の会話で作業していたときだけだったのです。詳しい要件は Gemini との過去のチャットのメモリーを使用してパーソナライズする に書かれています。
パーソナライズの入口が一つだと思っていたのも、私の勘違いでした。Gemini アプリのパーソナライズは、過去のチャットのメモリー、接続済みの Google アプリから読み取る内容、そして回答の仕方を指定するカスタム指示——地域によっては「保存された情報」と呼ばれます——の三つで成り立っています。三つとも別々に設定でき、別々に消せます。
「保存された情報を消したのに直らない」という話を見かけることがありますが、多くはこの三本立てのうち一本だけを触っている状態なのだと思います。私もそうでした。混ざっている前提がどれ由来なのかを先に見分けないと、正しい操作をしても手応えが返ってきません。
参照されたかどうかは、その場で確かめられます。「過去のチャットの情報を利用しましたか?」と聞くと、Gemini が答えてくれます。私が試したときは、以前の会話に触れたことを認める返事が返ってきました。憶測で悩んでいた時間が、ひと言で片づいた感覚でした。
消したのに残るのは、情報の出どころが二系統あるからです
私が最初にやったのは、該当しそうなチャットを履歴から消すことでした。それで済むと思っていたのです。結果は芳しくありませんでした。数日後、同じ前提がまた顔を出しました。
理由は単純でした。Gemini が私について知っている情報には、出どころが二つあります。一つは過去のチャットそのもの。もう一つは、接続済みアプリから取得した内容です。前者だけを消しても、後者から同じ情報が入り直します。逆に接続を解除しただけでも、過去のチャットに書かれていれば参照されます。
つまり、どちらか片方では足りません。手順としては次の順で進めます。
- Gemini アプリ アクティビティを開き、その情報を含むチャットをすべて削除します。最近のチャット一覧からも消します。
- その情報の供給元になっているアプリの接続を解除します。
- 反映を待ちます。チャットを削除しても、パーソナライズに使われなくなるまで時間がかかることがあります。接続済みアプリ側でデータを消した場合は、Gemini 側へ反映されるまで数日かかると案内されています。
待ち時間の話をもう少しだけ続けます。この機能は「アクティビティの保存」がオンであることを前提にしているので、保存そのものをオフにすればメモリーは働かなくなります。強い手ではありますが、代償もあります。引き継いでほしい文脈まで一緒に失われるのです。
私は一度この切り方を試して、翌週に戻しました。混ざりを止めたい相手は特定の一件だけで、それ以外の連続性はむしろ助かっていたからです。全部を止めるより、置き場所を分けるほうが自分の仕事には合っておりました。
三番目がいちばん大事だと、いまは思っております。私は削除した直後に同じ質問を投げて「まだ残っている」と早合点しました。壊れていたのは仕組みではなく、私の待ち方でした。
Gem と Gemini Live に効かないことは、制約ではなく道具になります
条件表の最後の行を読み返して、手が止まりました。Gem では過去のチャットのメモリーが使われません。
困った制約として書かれている一行が、私にとっては解決策そのものでした。アプリごとに混ざってほしくないのなら、混ざらない場所で作業すればよかったのです。
いまはこう分けております。
| 用途 | 置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| アプリごとのストア文言・レビュー返信 | そのアプリ専用の Gem | 前提を Gem の指示に固定でき、別のアプリの記憶が入り込みません |
| 横断的な相談・調べもの | 素の会話 | 前の話を引き継いでほしい場面なので、メモリーが働くほうが助かります |
| まだ人に見せたくない下書き | メモリーをオフにするか、その日のうちにアクティビティから削除 | 後で消す前提の情報を、参照される場所に置かないためです |
Gem に前提を書くときは、アプリ名・対象読者・使ってはいけない表現の三つだけを最初に置いております。長い指示は自分でも読み返さなくなるので、増やしたくなったら本文のほうへ回します。
素の会話に残すのは、まだ形になっていない相談です。ここでメモリーが働くのは都合がよく、前に話した方針を毎回説明し直す手間がありません。同じ機能が、場所を変えるだけで邪魔にも助けにもなります。
この分け方に落ち着いてから、混ざりは起きておりません。原則にすると一行です。前提は Gem に、思いつきは素の会話に。 迷ったときは、その内容を三ヶ月後の自分に引き継ぎたいかどうかで決めております。引き継ぎたいなら素の会話、その仕事限りなら Gem です。
設定が見当たらないときは、順番に確かめてください
パーソナル インテリジェンスは順次提供されている機能です。手元に表示されていないことは、それ自体では異常を意味しません。
私は「設定が無い」と「設定が壊れている」を混同して、しばらく無駄に探しました。いまは、アカウントの種類(個人か、管理対象か)、アクティビティの保存の状態、そして提供状況、という順で確かめます。管理対象のアカウントで使えないという一行は、仕事用アカウントで作業している方には最初に効いてくるはずです。
同じ「出てこない」で困ったときの切り分けは、Gemini の新機能が Workspace に出てこないとき、待ちと不具合を切り分ける順序 にも書き残しております。
送った内容がどう扱われるかは、別の設定です
ここまではアプリ側の話でした。API に送ったデータの扱いは、これとは別の枠組みで決まります。混同すると、消したはずの心配が別の場所に残ります。
私はこの二つを一度きちんと切り離してから、ようやく落ち着いて使えるようになりました。API 側の条件は Gemini API に送ったデータが学習に使われる条件と、有料枠でも例外になる操作 にまとめてあります。
なお、削除の対象になるのは自分のアカウントの範囲です。プライバシー全般の考え方は Gemini アプリのプライバシー ハブ が入口になります。
きょう試していただきたいこと
いつも使っている会話で、一度だけ「過去のチャットの情報を利用しましたか?」と聞いてみてください。参照されているかどうかが分かれば、会話を分けるべきかどうかも決まります。
私はこの質問を、新しい仕事を始める日の合図にしております。相手が何を覚えているかを先に確かめてから、話し始めるようにしたのです。
拙い記録ですが、同じ混ざり方に戸惑った方の手がかりになれば嬉しく思います。