壁紙アプリのストア文言を言語ごとに並べた表で、=AI() を一列ぶん入れて「生成して挿入」を押した夜のことでした。ボタンは灰色のまま沈まず、セルは空のままでした。
その日は昼間に別の表で同じ関数をずいぶん叩いておりましたので、上限に当たったのだと思い込みました。ヘルプにも、長期の上限に達したら 24 時間待つよう書かれています。ですから素直に待つことにして、その晩は閉じました。
翌朝、同じ表を開いて、同じように押しました。やはり灰色のままでした。
原因は上限ではなく、その表の置き場所でした。個人開発の作業ファイルを Dropbox にまとめる癖がありまして、その表も Dropbox 経由で開いておりました。Google のヘルプには、Box・Dropbox・Egnyte で Sheets を開いた場合は AI 関数で生成できない、という一行が確かに書かれています。読み落としていたのは私のほうでした。
待つと決める前に、その表をどの経路で開いたのかを確かめます。 まる一日を溶かしてから、この順番を覚えました。いま思えば、待っているあいだも私は何ひとつ確かめていなかったのです。
押せないのか、押せるのに入らないのか
同じ「生成できない」でも、画面の見え方で原因の当たりがつきます。手を動かす前に、自分がどれに当てはまるかを決めていただければと思います。
ひとつめは、セルを選んでも「生成して挿入」が押せない形です。上限か、置き場所か、プランのいずれかを疑います。
ふたつめは、押せるのに一部のセルだけ空で残る形です。これは上限の別の顔で、複数セルをまとめて選んでも、生成されるのは先頭の 350 セルまでと決まっています。残りは、終わるのを待ってから選び直せば埋まります。
みっつめは、「AI function not available」と出る形です。こちらは上限ではなく、資格の話になります。プラン・管理者設定・言語設定のどれかが噛んでいます。
上限は二階建てで、24 時間は後ろ側だけです
AI 関数の生成回数には、短期の上限と長期の上限の二段があります。ヘルプが「24 時間待ってから試してください」と案内しているのは、このうち長期のほうに当たった場合です。
ここに落とし穴がありまして、短期の上限は数分から数十分で戻るのに、私は区別せずに「上限らしいから明日まで待とう」と丸めてしまいました。待ち方が雑だと、待っている時間そのものが原因の切り分けを遅らせます。
判断の目安はひとつです。数分置いて押し直して戻るなら短期の上限、翌朝まで戻らないなら上限以外の理由を疑います。 翌朝も灰色のままだったとき、私は二日目に入る前にここで引き返すべきでした。
Dropbox や Box 経由で開いた表では、生成そのものができません
Google のヘルプは、AI 関数の制限事項として「Box・Dropbox・Egnyte など他のクラウドストレージから Google Drive で Sheets にアクセスしている場合は、AI 関数でコンテンツを生成できません」と明記しています。条件付きでも、上限の話でもありません。その経路では機能が提供されない、という書き方です。
やっかいなのは、画面上では何も変わって見えないところでした。開いているのはいつもの Google スプレッドシートで、URL も docs.google.com で始まります。同じメールアドレスで Dropbox と Google を使っていれば、行き来に違和感はありません。それでも、そのファイルの実体は Drive ではなく他社のストレージにあります。
私が半日つぶしたのは、見た目が同じだったからでした。画面が同じでも、実体の置き場所は同じとは限りません。
一つ試せば確かめられます
置き場所が原因かどうかは、AI 関数をいくら押しても分かりません。代わりに、同じ表の空きセルに IMPORTRANGE をひとつ置いてみてください。
=IMPORTRANGE("https://docs.google.com/spreadsheets/d/YOUR_SPREADSHEET_ID/edit", "シート1!A1")他社ストレージ経由の表では、この関数も使えません。AI 関数だけが黙っているのか、IMPORTRANGE も一緒に落ちているのかで、原因が上限側か置き場所側かが割れます。プランや管理者設定を調べに行く前に、30 秒で済む確認です。
同じ経路では、ほかにも静かに落ちている機能があります。
| 機能 | Box・Dropbox・Egnyte 経由で開いた表 |
|---|---|
| AI 関数での生成 | できません |
IMPORTRANGE | できません |
| Apps Script・Docs/Sheets/Slides の API | できません |
| データコネクタ・マクロ | できません |
| 保護された範囲(編集できる人を限定する設定) | できません |
| 他のドキュメントからのリンク挿入(連携したグラフや表) | できません |
| Android・iOS アプリからの編集 | できません |
| Google フォーム・Google サイト | できません |
| 共有設定・削除・書き出し | 保管先サービスの画面から行います |
この表を先に見ていれば、「そういえば先月、この表からスクリプトを動かそうとして諦めた」と思い出せたはずでした。落ちている機能はひとつではなく、束で落ちています。ひとつ気づいたら、ほかも疑ってみてください。
Drive へ移すときに、移らないもの
生成を使いたい表だけを Drive 側へ移すのが、いちばん早い直し方です。ただ、まるごと同じものが移るわけではありません。
手順は二通りあります。ひとつは、Drive で新しいスプレッドシートを作り、元の表を全選択して貼り付ける形です。値・数式・書式は移りますが、保護された範囲やスクリプトは移りません。もうひとつは、いったん .xlsx で書き出し、Drive にアップロードしてからスプレッドシート形式に変換する形です。行数の多い表ではこちらが確実でした。
移したあとに手で直すのは、だいたい次の三つでした。共有相手の設定、他ファイルを参照している数式、そして条件付き書式の範囲です。AI 関数の列は、移し終えてから入れ直せば動きます。
なお、AI 関数には元に戻す操作がありません。生成した結果が気に入らないときは、取り消すのではなく「更新して挿入」で作り直します。移行の直後にまとめて生成をかけると、戻せない上書きが増えますので、最初は一列だけで試していただくのが安全です。関数まわりでつまずいたときの向き合い方は、Gemini in Sheets の数式エラー1クリック修正を、信用しすぎずに使うにも書き残しました。
置き場所でも上限でもなかったとき
ここまでで直らない場合、残るのは資格と式の書き方です。
「AI function not available」と出ているなら、対象は三つあります。ひとつは、対応する Google Workspace か Google AI のプランに入っているかどうか。ふたつめは、管理者が機能を止めていないかどうか。みっつめが見落としがちなのですが、アカウントの言語設定でも出なくなることがあります。列を一気に埋める「Fill with Gemini」に至っては、現時点では米国・英語のみの提供です。
機能そのものが順番待ちで届いていない可能性もあります。その切り分けはGemini の新機能が Workspace に出てこないとき、待ちと不具合を切り分ける順序にまとめています。
式の側の理由は、私が実際に踏んだものが二つありました。ひとつは、AI 関数を他の関数の中に入れられないという制限です。
# 動きません(AI 関数は入れ子にできません)
=IF(AI("この文が否定的かどうかを判定してください", A2)="否定的", "要対応", "")
# 二列に分けると動きます
# B2: 判定だけを AI 関数にまかせる
=AI("この文が否定的なら『否定的』、そうでなければ『中立』とだけ返してください", A2)
# C2: 判定結果を普通の関数で受ける
=IF(B2="否定的", "要対応", "")判定と分岐を同じセルに詰め込まず、AI に出させる列と、その結果を機械的に処理する列は分けておきます。 この形にしてから、私の表は人の目にも読みやすくなりました。
もうひとつは、Apps Script で =AI() という名前のカスタム関数を自作していると、Sheets 側の AI 関数に読み替えられてしまう点です。自作のほうが動かなくなりますので、名前は別に取っておくのが無難でした。
明日いちばんに押すとしたら
「生成して挿入」が沈まなかったら、上限を疑って一日待つ前に、空きセルへ IMPORTRANGE をひとつ置いてみてください。そこで同じように断られたら、それは回数の問題ではなく、その表が Drive の外にいるという知らせです。
私はいまも Dropbox を作業の中心に置いたままですが、AI 関数を使う表だけは Drive 側に分けて置くようにしております。道具を全部そろえ直すのではなく、機能が要る一枚だけを移す——その線引きでしばらく困っておりません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。同じところで一日を溶かす方が一人でも減りましたら嬉しく思います。