受託でお手伝いしているサイトの原稿を、お客さまと Drive の Google ドキュメントで回しております。先日、いただいた赤字を反映して一段落を丸ごと書き直し、その流れで Gemini に「いまの原稿を三行で要約してください」と頼みました。
返ってきた三行に、書き直す前の一文がそのまま入っておりました。
ドキュメントを開き直しても、直した文はきちんと保存されています。共有の設定も変わっておりません。それでも Gemini は前の文を返してきます。私は最初、反映に時間がかかっているのだろうと考えて、数分おいてから何度か聞き直しました。結果は芳しくありませんでした。
原因は待ち時間ではありませんでした。古かったのはファイルではなく、私が続けていた会話のほうでした。
ソースは、その会話の最後まで残ります
Gemini のヘルプには、ソースの扱いについて短い一文があります。ソースを追加すると、その会話の間ずっと有効なままになり、会話全体に一貫した文脈を与える、と書かれています。
一貫した文脈、というのは普段はありがたい性質です。同じ資料について何往復も質問するとき、毎回ファイルを指し直さずに済みます。
ただ、この「ずっと有効」は、ソースを追加した時点の内容が会話に居座り続けるという意味でもあります。私はソースを「ファイルへの参照」だと思い込んでおりました。実際には、参照というより、会話が抱えている文脈そのものに近いのです。
ですから、原稿を直したあとに同じ会話で聞き直しても、直す前の内容が答えの材料として残ります。ファイルのほうは新しく、会話のほうが古いままです。あの三行の正体は、この食い違いでした。
入口も書き残しておきます。ドキュメントやスライドでは、右上の「Gemini に質問」からパネルを開き、下部の「ソースを追加」から「ドライブから追加」でファイルを選びます。Drive のトップからであれば、右上の「Gemini に質問」を押し、左のパネルの「ソース」から追加します。どちらの入口を通っても、追加したソースは開いている会話に紐づきます。
同じ会話の中では、いったん外すことができません
もう一文、続きがあります。Gemini は前のターンのソースを参照できるため、いったん含めたソースを除きたいときは、新しい会話を始めて、ソース設定で使いたいものを選び直すように、とヘルプは案内しています。
つまり、同じ会話の中でソースを外すという操作は用意されていません。チェックを外したつもりでも、前のターンで渡した内容は参照されうる、ということです。
ここは、はじめて読んだとき手が止まりました。画面にはソースの一覧があり、追加も削除もできるように見えるからです。見えているのはこれから優先させるものの一覧であって、すでに会話へ入ったものを取り消す操作ではないのだと、あとから理解しました。
一貫性と鮮度は、たいてい両立しません。会話にソースを固定すれば毎回指し直さずに済み、そのぶん編集への追随は鈍ります。逆に毎回読み直す設計なら鮮度は保てますが、議論の途中でファイルが変わったときに足元が崩れます。どちらが正しいという話ではなく、いまの Gemini は前者を選んでいる——そう受け取ってから、私は自分の手順のほうを合わせることにしました。
編集した資料について聞き直すときは、会話ごと新しくします。 この一点だけを決めて、迷う時間をなくしました。
新しい会話を始めたときの既定も、あわせて把握しておくと事故が減ります。
| 検索先 | 新しい会話での既定 |
|---|---|
| Drive | オン |
| Gmail | オン |
| Chat | オン |
| カレンダー | オン |
| ウェブ検索 | オフ |
Drive・Gmail・Chat・カレンダーは、何もしなければ検索先として有効になっています。ウェブ検索だけが既定でオフです。ここを知らないまま「このドキュメントだけを見て答えてください」と頼むと、隣のメールや予定の内容が混ざることがあります。会話を新しくしたときは、質問を投げる前にソース設定を一度開いて、検索先を絞っておくと安心です。
「全部読まれている」とは限りません
会話を新しくしても答えが噛み合わないときは、もうひとつ疑うところがあります。読み込まれる量の上限です。
ヘルプは、リクエストごとに処理できる量には限りがあり、ソースが多すぎる場合や、テキスト量の多いソースを含めた場合には、その一部だけに基づいて答えることがあると明記しています。
ここは黙って起こります。エラーも警告も出ません。以前、長い打ち合わせ記録を丸ごと渡して「後半の決定事項をまとめてください」と頼み、前半だけを要約した答えが返ってきたことがありました。当時の私は、要約の指示が下手なのだと受け取っておりました。いま思えば、後半がそもそも届いていなかった可能性のほうが高かったのだと感じています。
手当ては素朴です。
- 資料を減らします。関係のないソースを外し、会話を作り直します
- 資料を分けます。長いドキュメントは章ごとに分け、聞きたい範囲だけを渡します
- スプレッドシートは範囲で渡します。セル範囲を選択してから質問すると、その範囲を対象にできます(対象になるのは、いま開いているシートタブの中だけです)
三つとも、渡す量を絞るという同じ考えの言い換えです。多く渡すほど正確になるわけではありません。 私は逆のことを長く信じておりました。関係しそうな資料を片端から足せば、それだけ確からしい答えが返ってくるのだろう、と考えていたのです。
答えのあとにある「ソース」を毎回開きます
Gemini の回答の下には、その答えに寄与したファイルの一覧が出ます。ここを開く習慣をつけてから、噛み合わない答えの原因がその場で見当をつけられるようになりました。
そしてヘルプには、正直な但し書きが添えられています。実際に使ったソースを一覧に載せ損ねることがある、直接使っていない資料を挙げることがある、そしてもとの依頼に含まれていない資料を、あたかも事実であるかのように作り出してしまうことがある、と書かれています。
作り出す、というところは重い記述です。ソースの一覧は答え合わせの手がかりであって、答えそのものではないということになります。
ですから私は、要約がそのまま先方へ渡る文面になるときや、判断の材料になるときだけは、元のドキュメントを開いて該当箇所を目で確かめるようにしております。全部を確かめると時間が足りませんので、確かめる場面のほうを先に決めておく、という順序です。
症状から当たりをつける
私が実際に使っている切り分けを、表にしておきます。
| 症状 | まず疑うところ | 手当て |
|---|---|---|
| 直したはずの文が答えに残ります | 会話に残っている古いソース | 会話の作り直しとソースの選び直し |
| 指定していない資料の話が混ざります | Drive・Gmail などの既定オン | ソース設定での検索先の絞り込み |
| 後半や末尾だけが抜けます | 一度に処理できる量の上限 | ソースの削減と資料の分割 |
| アクセス権が必要だと表示されます | ファイルの閲覧権限 | 閲覧権限の取得と追加のやり直し |
| PDF をソースに指定できません | Drive に置かれていないこと | Drive へのアップロード |
ソースとして追加できるのは、Google ドキュメント・スプレッドシート・スライド、そして PDF です。PDF は Drive に上げてからでないと選べません。共有された資料を扱うときは自分に閲覧権限が要る点も、あわせて覚えておくと原因探しが短く済みます。
一度だけ、遠回りをしてみてください
ここまでを踏まえて、最初に試していただきたいことは一つです。
いま開いている会話をそのまま続けず、新しい会話を一つ立てて、直した資料をソースに指定し直したうえで、同じ質問をもう一度してみてください。 答えが変われば、原因は会話の側にありました。答えが変わらなければ、量の上限か閲覧権限のほうを疑う番になります。
この一手間は、はじめのうち遠回りに感じられます。それでも、原稿を直すたびに数分ずつ首をかしげていたころと比べれば、はるかに短く済んでおります。
私自身、しばらくのあいだ「反映が遅いだけ」と思い込んで待っておりました。同じところで手が止まっている方の、ほんの少しの近道になれば嬉しく思います。