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◈ API / SDK/2026-07-04上級

一晩のバッチで静かに落ちた数十件をどう拾うか — Gemini Batch API の行単位リトライ台帳

Batch API の「完了」は「全件成功」ではありません。個人開発で夜間バッチを回し続けるなかで見えた、行単位の結果台帳・一時失敗と恒久失敗の切り分け・選択的リトライ・恒久失敗の無限リトライ防止を、SQLite で組んだ状態機械の動くコードとともに残します。

gemini-api287batch-api3リトライ設計3冪等性6個人開発121運用設計15

✦ プレミアム記事

朝、バッチジョブのステータスが SUCCEEDED になっていました。安心して結果を書き戻し、その日は別の作業に移りました。

数日後、分類結果を眺めていて気づきます。ある一群のレビューだけ、カテゴリが空のまま Firestore に入っていました。件数にして数十件。ジョブ全体は「成功」でも、その中の一部の行は静かに落ちていたのです。

個人開発で複数のアプリと4つのサイトを回していると、夜間バッチは「動かしてから寝る」道具になります。App Store Connect と Google Play Console に溜まったレビューを分類する私自身の運用でも、翌朝に全件が揃っている前提で次の処理を積み上げていました。だからこそ、この「一部だけ落ちる」取りこぼしは、後工程まで汚染してしまいます。

この記事は、Batch API の完了を「全件成功」と読んでしまう油断をやめ、行単位で結果を台帳に記録し、落ちた行だけを拾い直す設計をまとめたものです。夜間処理の初回実装ではなく、その後に必ず訪れる「失敗した数十件をどう回収するか」に焦点を当てています。

「完了」と「全件成功」は違う

Batch API のジョブ状態と、ジョブに含まれる個々のリクエストの成否は、別の層の話です。ジョブは無事に終わっても、出力JSONL の各行には成功したレスポンスと失敗したエラーが混在します。

出力の1行は、おおよそ次のどちらかの形をしています。SDK のバージョンによってキー名は前後します。この場合は、実際の出力を一度 head で覗いてから実装に落とすことを推奨します。

{"key": "review-000512", "response": {"candidates": [ ... ]}}
{"key": "review-000513", "error": {"code": 400, "message": "..."}}

つまり、ジョブが SUCCEEDED でも、error を持つ行は普通に混ざります。私が取りこぼしたのは、safety フィルタに引っかかった攻撃的なレビュー本文と、絵文字だけで構成された本文でスキーマ抽出に失敗した行でした。

私自身の実測では、8,000件規模のバッチで error を持つ行はおおむね全体の1〜2%、件数にして数十件から百数十件でした。通常APIの約50%というコストで回せる代わりに、この数%を静かに取りこぼすと、後工程がじわじわ狂います。

ここで大切な考え方を1つ。ジョブの成否と、行の成否を、別々に記録すること。この2層を混ぜて「ジョブが成功したから全部入れる」とすると、必ず穴が空きます。

行単位の台帳を持つ

そこで、投入するリクエスト1件ごとに状態を持つ台帳を用意します。キーは custom_id(ここでは key)です。状態は次の4つに絞りました。

状態意味次にすること
pendingまだ結果を受け取っていない次のバッチに含める
succeeded正常な構造化出力が得られた何もしない(確定)
retryable一時的な失敗(429 / 503 等)回数上限まで再投入する
permanent入力起因・safety 等で再試行しても直らない再投入せず、別扱いで人間が見る

SQLite にしたのは、個人開発の夜間バッチで「1ファイルで持ち運べて、途中で落ちても残る」ことが何より効くからです。台帳のスキーマと初期化はこれだけです。

import sqlite3
import time
 
def open_ledger(path: str = "batch_ledger.db") -> sqlite3.Connection:
    conn = sqlite3.connect(path)
    conn.execute(
        """
        CREATE TABLE IF NOT EXISTS rows (
            key           TEXT PRIMARY KEY,
            payload       TEXT NOT NULL,   -- 入力リクエスト(JSON文字列)
            status        TEXT NOT NULL DEFAULT 'pending',
            attempts      INTEGER NOT NULL DEFAULT 0,
            last_error    TEXT,
            result        TEXT,            -- 成功時の抽出結果(JSON文字列)
            updated_at    REAL NOT NULL DEFAULT 0
        )
        """
    )
    conn.commit()
    return conn
 
 
def enroll(conn: sqlite3.Connection, key: str, payload: str) -> None:
    """初回投入時に pending として登録する。再投入では触らない。"""
    conn.execute(
        "INSERT OR IGNORE INTO rows(key, payload, updated_at) VALUES (?, ?, ?)",
        (key, payload, time.time()),
    )
    conn.commit()

INSERT OR IGNORE にしているのが要点です。2晩目に同じ key で再投入しても、succeeded 行を pending に巻き戻さない。台帳は「一度確定した成功を守る」ためにあります。

✦

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この記事で得られること
✦Batch の出力JSONLを custom_id で照合し pending / succeeded / retryable / permanent の4状態を持つ SQLite 台帳を組む実装を、コピペで動く形で手に入れる
✦429 や 503 のような一時失敗と、safety ブロックや不正入力のような恒久失敗を分類し、恒久失敗を無限にリトライしない停止条件の作り方がわかる
✦2晩目・3晩目に「失敗した行だけ」を再投入する選択的リトライと、試行をまたいだコスト計上のズレを台帳で吸収する運用手順を学べる
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