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AdMob レポートの判定は Gemini にやらせない — 構造化出力を「抽出」に限定する設計

AdMob レポートからフロア(eCPM 下限値)を決めるとき、Gemini に判定そのものをやらせるのは危険です。構造化出力は「乱れたレポートを型付きデータに抽出する」工程だけに限定し、しきい値判定は決定論的なコードに置く——その設計理由と実装を、実際の 42 グループ運用の判定ルールとともにまとめました。

Gemini API201構造化出力9AdMob10アプリ収益化2設計

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AdMob のレポートからフロア(eCPM 下限値)を決める作業を自動化するとき、多くの人が最初に思いつくのは「レポートを丸ごと Gemini に渡して、各グループの新しいフロアを答えさせる」です。私も最初はそうしかけたのですが、すぐにやめました。しきい値の計算と判定を LLM にやらせると、その判定が監査できなくなるからです。フロアの設定は収益に直結する不可逆な操作で、「なぜこの値になったか」を後から再現できない仕組みは、運用に乗せてはいけません。

私は 2014 年からの個人開発で累計 5,000万ダウンロードのアプリ事業を運営し、AdMob は月間ピークで 150 万円ほどの収益源です。国際芸術賞 17冠のアート活動と並行してこの規模を一人で回す中で、毎月 42 のメディエーショングループのフロアを見直しています。その経験から言えるのは、Gemini の構造化出力は「判定」ではなく「抽出」にこそ強い、ということです。以下では、構造化出力を抽出工程だけに限定し、判定をコードに分離する設計を、実際に運用している判定ルールとともに示していきます。

なぜ判定を LLM にやらせてはいけないのか

フロアの判定ルール自体は、実は完全に決定論的です。私が使っているルールはこうです。iOS のフロアは実勢 eCPM × 55% を基準にし、現フロア / eCPM の比率が 65% を超えていたら引き下げ、比率が 40% 未満かつマッチ率が 95% を超えていたら引き上げ、その中間(40〜65%)は維持。最小単位は $0.50。Android は実勢比ではなく一律 $0.50 固定です。

このルールは四則演算としきい値比較だけで完結します。つまり、LLM に「判断」させる余地は本来ありません。にもかかわらず LLM にプロンプトでルールごと渡すと、3 つの問題が出ます。第一に、しきい値の境界(比率がちょうど 65.0% のとき等)で出力がぶれます。第二に、同じ入力でも実行ごとに微妙に違う値が返る可能性があり、再現性が崩れます。第三に、最大の問題として、「比率 64% だから維持」という判断の根拠を、出力からは検証できない。コードなら ratio = floor / ecpm の 1 行を見れば誰でも追えますが、LLM の内部推論は追えません。

フロアの誤設定は、高すぎればフィル率が落ちて no-fill が多発し、低すぎれば eCPM が崩れます。実際、過去に Android INT のフロアを実勢に対して過剰に高く設定していたために、マッチ率が 70% 台で頭打ちになっていたことがありました。こういう「効きすぎ・効かなすぎ」を後から検証して直すには、判定が決定論的でなければなりません。

では Gemini に何をやらせるのか — 「抽出」だけ

一方で、AdMob のレポートを CSV やコピペで受け取ると、データは驚くほど乱れています。グループ名の表記ゆれ、通貨記号の有無、マッチ率が「47.53%」だったり「0.4753」だったり、列順がエクスポート設定で変わる。この乱れた入力を、型の揃った行データに整える工程こそ、Gemini の構造化出力が圧倒的に強い領域です。

ここでのコツは、出力スキーマに「判定結果」を一切含めないことです。スキーマには生の観測値(グループ名・グループ ID・実勢 eCPM・マッチ率・現フロア)だけを定義し、新フロアや「引き上げ/引き下げ」といった判断は絶対にスキーマに入れません。LLM の責務を「乱れた入力 → 型付きの観測値」に閉じ込めるわけです。

import os
from google import genai
from pydantic import BaseModel
 
class GroupRow(BaseModel):
    group_name: str
    group_id: str
    ecpm_usd: float        # 実勢 eCPM(観測値のみ)
    match_rate: float      # 0.0〜1.0 に正規化
    current_floor_usd: float
 
class ExtractedReport(BaseModel):
    rows: list[GroupRow]
 
client = genai.Client(api_key=os.environ["YOUR_GEMINI_API_KEY"])
 
raw_report = open("admob_mediation_report.txt", encoding="utf-8").read()
 
resp = client.models.generate_content(
    model="gemini-2.5-pro",
    contents=(
        "次の AdMob メディエーションレポートを、各グループ 1 行に正規化して抽出してください。"
        "match_rate は 0.0〜1.0 に変換。判定や推奨値は出力しないこと。観測値のみ。\n\n"
        + raw_report
    ),
    config={
        "response_mime_type": "application/json",
        "response_schema": ExtractedReport,
    },
)
 
report: ExtractedReport = resp.parsed

プロンプトに「判定や推奨値は出力しないこと」と明示しているのが肝です。スキーマで縛ったうえで、自然言語でも責務を限定する。これで Gemini は「抽出器」として安定して動きます。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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この記事で得られること
Gemini 構造化出力を「抽出」に限定し、しきい値判定をコードに置く分離設計の理由と実装
実運用の 42 グループ向けフロア判定ルール(eCPM×55%・比率しきい値)の決定論的な実装例
LLM にしきい値計算をやらせると監査不能になる仕組みと、それを回避する型付きスキーマ設計
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