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◈ API / SDK/2026-07-12上級

長尺PDFの章ごと要約で、まる一章が要約から消えていたとき — 被覆率を計測して取りこぼしを塞ぐ運用メモ

章ごと要約→全体再結合は長尺PDFに効きますが、抽出漏れや再結合で一章がまるごと消えても要約は素知らぬ顔で完走します。被覆率という一つの数字で取りこぼしを検知し、消えた章だけ再実行する監査つきパイプラインを実装で示します。

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✦ プレミアム記事

先日、480 ページの技術仕様書を章ごとに要約させ、その要約だけを根拠に「この製品は上限まわりの制約が緩い」と判断しかけました。実際にはページ番号でいう真ん中あたりに、制限事項をまとめた一章がまるごと存在していました。要約にはその章の名残がどこにもありません。パイプラインはエラーひとつ吐かず、最後まで完走していました。

個人開発でアプリや資料を一人で回していると、長尺のドキュメントを機械にまとめさせたい場面は毎週のように訪れます。章ごと要約 → 全体再結合というパターン自体は、長尺 PDF に対してよく効きます。ただ「章に分けて並列で要約する」という構造そのものが、一章が静かに欠けても気づけない盲点を抱えています。ここでは、その取りこぼしを被覆率という一つの数字で捕まえ、消えた章だけを自動で再実行する監査つきパイプラインを、実装とあわせて整理します。

要約は、章が消えても素知らぬ顔で完走する

一括要約が「後半が薄くなる」形で崩れるのに対し、章分割方式の崩れ方はもっと厄介です。章を集合として扱うため、集合から要素がひとつ抜けても、残りの要素だけで文章としては綺麗に仕上がってしまいます。読み手には欠落が見えません。

私が観測した「章が消える」経路は、大きく三つに分かれます。

経路何が起きているか典型的な症状
アウトライン欠落PDF のしおりに一部の章が登録されておらず、章リストにそもそも入らない章数が目次より少ない。前後の章に本文が吸収される
空テキスト該当ページが画像スキャンで extract_text() が空文字を返す本文ゼロの章が「付録には各種情報が記載されています」の一行に化ける
再結合での溶解全体再結合の段で、要点の薄い章がモデルに切り捨てられる章要約には残っているのに、最終要約から章の主張が消える

いずれもモデルの能力の問題ではなく、パイプラインの構造上の問題です。だからこそ、モデルを賢くしても直りません。直すべきは「全部の章が最終成果物に届いているか」を測って、届いていない章を名指しする仕組みのほうです。

被覆率という一つの数字を置く

複雑な品質指標を並べる前に、まず一つだけ数字を決めます。ソースの章のうち、最終要約に主張が反映されている章の割合。これを被覆率と呼びます。

記号定義
Sソース PDF から抽出した章の集合(本文が空でないもの)
R最終要約に主張が反映されていると判定できた章の集合(R ⊆ S)
被覆率|R| / |S|。1.0 が全章反映

被覆率が 1.0 を割った瞬間、どこかの章が最終成果物に届いていません。大事なのは、この数字を「良し悪しの総合評価」にしないことです。被覆率はあくまで取りこぼしの検知器であり、要約の質そのものは別に測ります。一つの数字に多くを背負わせると、閾値の意味が曖昧になって運用で形骸化します。

あわせて、抽出段でのもう一つの安全網として、章ごとの本文長も見ておきます。本文が極端に短い章(たとえば全体中央値の一割未満)は、空テキスト経路の候補として警告に回します。要約に入る前に、そもそも入力が壊れていないかを弾く関門です。

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この記事で得られること
✦章ごと要約が静かに一章を落とす三つの経路(アウトライン欠落・空テキスト・再結合での溶解)を、症状から切り分けます
✦被覆率という一つの数値で取りこぼしを検知し、閾値割れの章だけを再実行する監査パイプラインを Python 実装で示します
✦検証パスは gemini-flash-latest と gemini-embedding-2 に振り分け、監査のコストを本要約の一割以下に抑える構成を提示します
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