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記事一覧/高度な活用
⬡ 高度な活用/2026-07-10上級

ADK アシスタントが三日前の約束を静かに忘れていた — 会話圧縮の記憶欠落を再現テストで炙り出す

Google ADK と Gemini で会話履歴を圧縮すると、コストは下がる代わりにアシスタントの記憶が静かに欠けていきます。リコールプローブという再現テストで欠落を数値化し、圧縮戦略を根拠を持って選ぶまでの実装手順をまとめました。

Google ADKSessionService会話圧縮Gemini91長期記憶Python51評価ハーネス

✦ プレミアム記事

「先週お話しした締切の件ですが」に、アシスタントが白紙で答えた

個人開発で回しているタスク支援アシスタントの会話ログを、ある夜なんとなく読み返していました。ADK(Agent Development Kit)に Gemini を載せた、ごく普通のマルチターン構成です。

三日前、私はこう書いていました。「金曜の 18:00 までにストア審査用のスクリーンショットを揃えたい」。

そして三日後、「例の締切、あと何日ですか」と聞いた私に、アシスタントはこう返していました。「恐れ入りますが、締切についての情報が見当たりません。詳しく教えていただけますか」。

胸の奥が少し冷たくなりました。壊れてはいないのです。エラーも出ていない。レスポンスは丁寧で、レイテンシは 900ms 台で安定していて、月末の API 請求も前月比で 40% ほど下がっている。すべてのメトリクスが健全でした。

下がった請求こそが犯人でした。会話が長くなるたびにトークンが膨らむのを嫌って、私は「10 ターンを超えたら過去分を要約に畳む」圧縮処理を入れていました。その要約が、締切を捨てていたのです。

コストの計測は入れていました。記憶の計測は入れていませんでした。

会話圧縮は「劣化を報告しない圧縮」である

画像の JPEG 圧縮なら、劣化は目で見えます。音声なら耳で聞こえます。会話履歴の圧縮に、それに相当する知覚がありません。

圧縮後のアシスタントは、忘れたことを知りません。忘れたという事実自体が履歴から消えているからです。だから「情報が見当たりません」という、丁寧で、正しく、そして無価値な返答が生まれます。

圧縮方式削るもの静かに落ちやすい情報
スライディングウィンドウ(直近 N ターンのみ保持)古いターン全体会話冒頭で宣言された前提・人物属性
要約圧縮(過去を LLM で1本の要約に)要約に載らなかった細部数値・固有名詞・日時・約束
ハイブリッド(要約+直近 N ターン原文)中間層の細部中盤で決まった仕様変更

要約圧縮が落とすのは、意味的に「重要でない」ものではありません。要約器のプロンプトが明示的に守れと言わなかったものです。「金曜 18:00」は会話全体から見れば一行に過ぎず、要約 LLM はそれを「ユーザーはストア申請の準備をしている」という一文に丸めてしまう。丸めた瞬間、時刻は失われます。

ここを直感で埋めるのはやめました。測ることにしたのです。

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