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Workspace 連携/2026-07-01上級

複数のトリガーが同時に書き込むと Gemini の結果が静かに消える — Apps Script の Properties 競合を畳む保管設計

Apps Script で Gemini の結果を複数のトリガーから保管すると、read-modify-write の競合と PropertiesService の容量制限で書き込みが静かに失われます。LockService と耐久シンク、冪等キーで取りこぼさない保管層を設計します。

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ある朝、Gemini に夜間生成させた要約を Apps Script でスプレッドシートへ書き戻す処理を見直していたところ、3 件動いたはずのジョブのうち 1 件分だけが、状態ストアから抜け落ちていました。エラーログには何も残っていません。実行履歴を見ると、2 つの時間主導トリガーがほぼ同じ秒に発火していました。これは個人開発でいくつもの自動化を並行させていると、いつか必ず踏む種類の落とし穴です。

原因は Gemini でも Apps Script のバグでもなく、私自身が書いた「読んで、足して、書き戻す」というありふれた更新処理にありました。今回は、その更新がなぜ静かに壊れるのかを再現し、LockService と耐久シンク、冪等キーで取りこぼさない保管層を組み立てていきます。

なぜ消えるのか:read-modify-write の競合

まず、よくある「結果を 1 つの JSON にまとめて保存する」コードを見てください。

function appendResultNaive(jobId, text) {
  const props = PropertiesService.getScriptProperties();
  const raw = props.getProperty('results') || '{}';
  const map = JSON.parse(raw);   // (A) 読む
  map[jobId] = text;             // (B) 足す
  props.setProperty('results', JSON.stringify(map)); // (C) 書き戻す
}

1 つのトリガーだけが動いている限り、これは正しく動きます。問題は、2 つのトリガーが (A) をほぼ同時に実行したときです。両方とも「jobId がまだ入っていない同じ map」を読み込み、それぞれ自分の結果を足し、それぞれ (C) で書き戻します。後から (C) に到達した実行が、先に書かれた結果を丸ごと上書きします。これがいわゆる lost update(更新の喪失)で、消えたほうのジョブは例外も出さずに無かったことになります。

Apps Script は 1 実行のなかでは単一スレッドですが、トリガーや並行実行は別プロセスとして同時に走り得ます。PropertiesService は「読み」と「書き」の間を守ってくれないので、この隙間が競合の入り口になります。

PropertiesService の制限を直視する

競合を直す前に、そもそも何を PropertiesService に入れてよいのかを押さえておきます。プロパティストアには明確な上限があり、これを超えると setProperty は例外で弾かれます。

ストア1 値の上限総量の上限主な用途
PropertiesService約 9 KB約 500 KB小さな調整状態・フラグ・インデックス
CacheService約 100 KB(揮発・最長 6 時間)読み出しを速くするホットキャッシュ
Drive / Spreadsheet実質的に大きい大きい本文そのものを置く耐久シンク

Gemini の生成結果は、要約程度でも数 KB、本文を含めれば 9 KB を平気で超えます。つまり「結果本文を PropertiesService に直接ためる」設計は、競合以前に容量で破綻します。実際に値のサイズを測ってから入れるなら、こう確認できます。

function fitsInProperty_(text) {
  const bytes = Utilities.newBlob(text).getBytes().length;
  return bytes < 9 * 1024;  // 9KB 未満なら 1 値に収まる
}

ここから導かれる原則はひとつです。PropertiesService には「どのジョブが、どこに、いつ書かれたか」という小さなインデックスだけを置き、結果本文は別の耐久シンクへ逃がします。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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この記事で得られること
PropertiesService の 9KB/値・500KB 総量制限と read-modify-write 競合で、Gemini の結果が上書きされて消える仕組みを再現コードで示します
LockService.getScriptLock の waitLock 予算とロック粒度の決め方を、取りこぼす失敗例つきで整理します
大きな出力を Drive へ逃がし、冪等キーで二重適用を止める保管層の完全な Apps Script コードを掲載します
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