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開発ツール/2026-04-08上級

Gemini API でアクセシビリティ監査を自動化する — 誤検出に振り回されない設計

Gemini API で WCAG 2.2 の監査を自動化する実装。計算で出せる項目と AI に判断させる項目を分け、構造化出力・ベースライン差分・CI ゲートで誤検出を抑えながら継続運用に乗せる方法をコード付きで解説します。

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個人開発で運用しているサイトに、Gemini API のアクセシビリティ監査を初めて走らせた夜のことを、今でもよく覚えております。

返ってきた JSON には、37 件の違反が並んでいました。胸が高鳴りました。ところが一件ずつブラウザで確かめていくと、コントラスト比 3.1:1 と断定された箇所は実測 7.2:1 で、まったく問題がありませんでした。逆に、フォーカスリングが背景に完全に溶けている本物の欠陥は、レポートのどこにも書かれていませんでした。

AI は画面を「見て」いるようで、ピクセルの色を測ってはいなかったのです。

この記事は、その失敗から組み直した監査パイプラインの記録です。要点は一つ。計算で確定する項目を、言語モデルに推測させないこと。この線引きを守るだけで、監査結果は「参考情報」から「CI で落とせる指標」に変わります。

AI に測らせてはいけないもの、任せるべきもの

WCAG の達成基準は、性質の異なる二種類に分かれます。数式で答えが一意に決まるものと、文脈を読まないと判断できないものです。

前者を言語モデルに投げると、もっともらしい数字が返ってきます。しかしそれは測定値ではなく、生成された数字です。一方、後者はルールベースのツールが最も苦手とする領域で、ここにこそ Gemini の価値があります。

レイヤー担当対象基準の例判定の根拠
決定論レイヤー Playwright + 計算コード 1.4.3 コントラスト比 / 2.5.8 ターゲットサイズ / 1.1.1 alt 属性の有無 / 3.1.1 lang computed style と矩形サイズから数式で確定
判断レイヤー Gemini API 1.1.1 alt テキストの妥当性 / 2.4.4 リンクテキストの明確さ / 1.3.1 見出しの意味的階層 / 1.4.1 色以外の手がかり 文脈・意味の理解が必要で、数式では表せない
参考レイヤー Gemini(スクリーンショット) 視覚的な違和感の指摘、レイアウト崩れの疑い 人間のレビューを呼び出すためのフラグとしてのみ扱う

同じ「1.1.1 非テキストコンテンツ」でも、alt が存在するかどうかは DOM を見れば一行で確定します。しかし alt="image1" が代替テキストとして役に立っているかは、周囲の文脈を読まなければ判断できません。前者を Gemini に、後者を正規表現に任せてしまうのが、最もよくある設計ミスです。

私が最初に踏んだのも、まさにこの落とし穴でした。本番運用に持ち込む前に気づけたのは、単に運が良かっただけだと思っております。

WCAG 2.2 と、自動化できる範囲の現実

WCAG 2.2 の達成基準は 80 を超えます。その全てを機械が判定できるわけではありません。四つの原則ごとに、自動化の相性は大きく違います。

原則代表的な基準決定論で確定AI の寄与
知覚可能コントラスト、テキスト代替高い代替テキストの質の評価
操作可能キーボード操作、ターゲットサイズ中程度フォーカス順序の妥当性
理解可能読みやすさ、入力支援低いエラーメッセージの具体性
堅牢マークアップの適合性高いほとんど不要

ルールベースのツールが検出できるのは、達成基準全体のおよそ 30〜40% と言われています。残りが人間の判断領域です。

Gemini を投入する狙いは、この「残り」の一部を機械可読な指摘に変えることであって、既に axe が正確に測れている領域を置き換えることではありません。ここを取り違えると、正しかった検査結果まで確率的になってしまいます。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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この記事で得られること
コントラスト比のような計算で確定する項目を AI に推測させないための、決定論レイヤーと判断レイヤーの分け方
response_schema と temperature 0.0 で監査 JSON の揺れを止め、再実行しても差分が出ない土台を作る実装
ベースライン差分と CI ゲートにより、誤検出でビルドを止めずに新規違反だけを確実に拾う運用手順
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