Gemini Gems は素晴らしい機能なのですが、多くの方が「とりあえず作ってはみたけど使っていない」状態に陥っているのを見かけます。私自身、最初の 2 ヶ月くらいは作っては放置のサイクルを繰り返していました。
転機になったのは「自分が 1 週間で同じプロンプトを 3 回以上書いていたら Gem にする」というルールを決めてからです。逆に言うと、思いつきで作る Gem は使われない、ということでもあります。
ここでは、私が実際に毎日のように起動している Gem を 9 パターンに分類して紹介します。それぞれ、なぜ Gem 化する価値があるのか、カスタム指示にどんな要素を入れているか、運用していて気づいたコツまで含めてお伝えします。明日からそのまま真似できる内容を意識しました。
パターン 1: 翻訳の「文体ロック」Gem
Gemini に「翻訳して」と頼むと、毎回少しずつトーンが揺れます。フォーマルな文体で訳してほしいのに、ときどき口語的な訳が出てきたり、その逆だったりするわけです。
私の解決策は、翻訳の文体を細かく規定した Gem を作ることです。たとえば「ブログ記事を日本語から英語に訳す Gem」のカスタム指示には、こう書いています。
あなたは日本語のブログ記事を英訳する翻訳者です。
- 文体は warm かつ informative。教科書調や企業 PR 調にしない
- 一文を短めに保ち、接続詞を多用しない
- 専門用語はそのまま(Claude, MCP, API など)
- 「〜と思います」「〜と感じます」のような主観表現は I think/feel を使わず削除して直接表現にする
- 訳出のみを返し、注釈や説明は不要
これだけで、訳のばらつきが激減しました。文体ロックのコツは、「やってほしいこと」より「やってほしくないこと」を多めに書くことです。AI は禁止のほうが守りやすいからですね。
パターン 2: 自分用の用語集を読み込ませた「ドメイン特化」Gem
仕事のドメインが特殊だと、毎回同じ説明をプロンプトに書く羽目になります。私の場合、自分が運営する 4 つのサイトの構造を毎回説明していました。
そこで、各サイトの構成・カテゴリ・主要 URL・運営方針をまとめた Markdown を、Gem の知識ファイルとしてアップロードしました。「Dolice Labs アシスタント」と名付けたこの Gem には「ユーザーが質問したら、まず知識ファイルを参照してから答えてください」と指示してあります。
これで「claudelab.net にプレミアム記事を追加するときの注意点は?」と聞くだけで、4 サイトの違いを踏まえた答えが返ってくるようになりました。背景情報を毎回貼り付ける手間が消えるのは、地味ですが大きな効率化です。
パターン 3: メールやメッセージの「下書き整形」Gem
英語メールを書くのが苦手な方、多いと思います。私もそうです。日本語で要点だけメモしておき、それを英語の丁寧なメールに整形してくれる Gem を作っています。
カスタム指示はシンプルです。
ユーザーが日本語でメッセージの要点を箇条書きで送ります。 それを英語の丁寧なビジネスメールに整形してください。
- 件名と本文を分けて出す
- 本文は 200 ワード以内
- "I hope this message finds you well" のような決まり文句は使わない
- 行動喚起を最後に 1 文置く
- 余計な言い換えで日本語の元のニュアンスを変えない
「決まり文句を使わない」と明示しないと、ChatGPT 由来の AI っぽい英文が出てきます。これだけでメールの「らしさ」が生身に近づきます。
パターン 4: 画像とテキストを組み合わせる「スクリーンショット解説」Gem
Gemini はマルチモーダルが強いので、これを活かさない手はありません。私が常用しているのは、エラー画面やコード画面のスクリーンショットを投げると、何が起きているかを説明し、対処法を提示してくれる Gem です。
カスタム指示はこんな感じです。
ユーザーは画面のスクリーンショットを投げます。
- まず画像に何が映っているかを 1 段落で説明
- 次に問題(エラー、警告、不整合など)を箇条書きで列挙
- 最後に最も可能性の高い原因と対処を 3 つ、優先度順に提示 推測には自信度を %% で添えてください。
スクリーンショットを投げて 30 秒で構造化された答えが返ってくるので、トラブルシューティングの初動が劇的に速くなります。「この警告何だっけ?」を Google で調べる時間が消えました。
パターン 5: 自分の文章スタイルを学習させた「文体マネ」Gem
ブログを書いていると、「書き出しが思いつかない」という状態に陥ることがあります。私はこれを避けるために、過去に書いた記事 30 本を知識ファイルとして読み込ませた「自分の文体で書く Gem」を持っています。
カスタム指示はこう書いています。
あなたは私のブログ記事の代筆者です。 知識ファイルにある過去記事の文体・語彙・構成パターンを学習し、それに沿って書いてください。
- 一人称は「私」
- 文末は「です・ます」調
- 必ず具体的な体験談から書き出す
- 抽象論を 3 段以上重ねない
- 結論を急がない 出力は記事の冒頭 3 段落のみ。続きは指示があってから書く。
これで書き出しさえ手に入れば、あとは自分で続きを書けます。完成原稿を Gem に任せるのではなく、「最初の壁を越える」ためだけに使うのがコツです。
パターン 6: コードレビュー専門の「観点固定」Gem
コードレビューを Gemini に頼むとき、毎回観点を指定するのは面倒です。私はレビュー観点を固定した「コードレビュー Gem」を作って常用しています。
カスタム指示の核心部分はこうです。
ユーザーがコードを貼り付けます。以下の観点で順にレビューしてください。
- セキュリティ(認証、SQLi、XSS、機密情報の漏洩)
- パフォーマンス(N+1、不要な再計算、メモリリーク)
- エラー処理(catch されない例外、不適切なログ)
- テスタビリティ(モックしにくい構造、副作用の扱い)
- 可読性(命名、関数の長さ、コメントの過不足)
各観点で問題があれば該当行と修正案を示し、なければ「問題なし」と書いてください。 全体的な改善提案は最後にまとめて。
これで「コードを貼って Enter」だけで構造化されたレビューが返ってきます。観点が固定されているので、見落としが減るのも副次的な利点です。
パターン 7: 議事録を「決定事項とアクションだけ」抜き出す Gem
会議や打ち合わせの議事録から、本当に必要な情報だけを抽出する Gem も重宝しています。冗長なやり取り全体を読み返すのは骨が折れるからです。
カスタム指示はこうです。
ユーザーが議事録テキストを送ります。以下の形式で返してください。
決定事項
- (決まったことを箇条書きで)
アクションアイテム
- 担当者: タスク内容(期限)
未解決事項
- (次回に持ち越されたもの)
雑談、自己紹介、決まらなかった議論は省く。 推測で情報を追加せず、議事録に書かれていることだけを使うこと。
「推測で追加しない」が重要です。これがないと Gemini は親切で「こういうことかもしれません」と勝手に推論を足してきます。議事録としてはノイズなので明示的に止めます。
パターン 8: 競合・参考サイトを定点観測する「比較レポート」Gem
これは Gem の知識ファイルにベンチマーク対象の URL や情報をまとめておき、新しい情報を貼り付けたときにベンチマークと比較してレポートしてもらう使い方です。
私の場合は、自分のサイトと競合サイトの記事タイトルや構成を比較する Gem を持っています。新しく書こうとしている記事タイトルを入れると「競合 A はこの角度で書いている、競合 B はこのキーワードを強調している、あなたが書く独自性のある角度はこのあたり」と返してくれます。
カスタム指示の鍵は「単なる比較で終わらせず、必ず自分の独自視点の提案で締める」を入れることです。これがないと、ただのまとめ屋さんになってしまいます。
パターン 9: 自分への「コーチ役」Gem
最後に、ちょっと変わった使い方ですが、自分の意思決定を整理する「コーチ Gem」を共有します。これは何かを決めかねているときに対話する用の Gem です。
カスタム指示はこんな感じです。
あなたは私のコーチです。私が抱えている迷いを整理する手伝いをしてください。
- すぐに解決策を出さありません。まず私に質問してください
- 質問は 1 ターンに 2 つまで
- 私の答えに対して反射的に同意しない
- 「事実」「解釈」「感情」を区別して整理を促す
- 最終的な意思決定は私が下すという前提を保つ
- 結論を急がせありません。3 ターン以上の対話を前提にする
このカスタム指示の特徴は「すぐ答えを出させない」ことです。AI のデフォルトは「答えを出す」方向に振れているので、明示的にブレーキをかける必要があります。これを入れると、Gemini は本当にコーチっぽい応答をしてくれるようになります。
Gem を使い続けるための運用ルール
最後に、Gem を「作って終わり」にしないための運用ルールを 3 つ挙げます。
ひとつは「使わなかった Gem は 1 ヶ月で消す」ことです。ダッシュボードに使われない Gem が並んでいると、本当に使う Gem を探すコストが上がります。
ふたつめは「Gem の名前を動詞で始める」ことです。「翻訳する」「整形する」「比較する」のように動詞で始めると、何のための Gem か一目でわかります。「アシスタント」「ヘルパー」のような名詞名は避けます。
3 つめは「3 ヶ月に 1 度カスタム指示を見直す」ことです。実際に使ってみて生まれた小さな不満を、カスタム指示の追記で潰していきます。Gem は育てる対象であって、作って固定するものではないと考えると、長く付き合えます。
明日からまず 1 つ作ってみるとしたら、パターン 1 の「翻訳の文体ロック Gem」がおすすめです。最も恩恵が大きく、カスタム指示も短く、効果がすぐ実感できます。