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API / SDK/2026-07-14上級

Batch ジョブが『まだ RUNNING です』のまま半日溶けていたとき — 状態別の滞留予算とレコード突合で詰まりを早期に名指しする運用メモ

Gemini Batch API のジョブが 24 時間 SLA の陰で静かに滞留していたとき、状態別の滞留時間予算とレコード数の突合で詰まりと取りこぼしを早期に検知するための計測手順を、運用ログの実測とともに整理します。

Gemini API182Batch API5SLO2オブザーバビリティ運用6

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夜間バッチのダッシュボードを朝いちばんに開いたら、ジョブが RUNNING のまま静止していました。投入は前夜の 22 時。もう 11 時間が経っています。けれど Batch API の SLA は「24 時間以内の完了」。監視は 24 時間を閾値に組んであったので、アラートはまだ鳴っていませんでした。

つまり、あと 13 時間、このジョブが本当に生きているのか死んでいるのか分からないまま待つしかない。納品は昼です。間に合いません。

この日の反省は明確でした。SLA を閾値にした監視は、詰まりを「手遅れになってから」しか教えてくれない。必要だったのは、いつもと違う滞留を、いつもの相場と比べて早期に名指しする仕組みでした。ここでは個人開発で運用しているパイプラインを題材に、状態ごとの滞留時間を計測して予算を引き、そこから外れたジョブを前倒しで拾う手順を、運用ログの実測とあわせて残しておきます。私自身、月次と夜間の二つの経路で同じ痛みを繰り返してから、ようやくこの形に落ち着きました。

なぜ 24 時間 SLA を閾値にすると必ず手遅れになるのか

Batch API の 24 時間はあくまで「これ以内には終わらせます」という上限の約束です。実際の完了は、通常負荷なら数分から数十分に収まります。ここに落とし穴があります。

正常なジョブが 20 分で終わる母集団に対して、閾値を 24 時間に置くと、詰まったジョブを検知できるのは「正常時の 70 倍以上遅れてから」になります。相場が 20 分なのに、90 分でも 3 時間でも黙っている監視は、監視として機能していません。

考え方を変えます。SLA は事業側との契約であって、異常検知の閾値ではない。異常検知の閾値は「このジョブが普段どれだけ状態に留まるか」という自分たちの実測分布から引くべきものです。

状態遷移のたびに滞留時間を刻む

まず、ジョブが各状態にどれだけ留まったかを記録します。QUEUED にいた時間、RUNNING にいた時間を、遷移のたびに台帳へ書き込みます。ポーリングのついでに刻むだけなので、追加の負荷はほとんどありません。

# 何を記録するコードか:
# ポーリングごとに状態を観測し、状態が変わった瞬間に
# 「直前の状態に何秒留まったか」を台帳へ追記する
import time, json
from pathlib import Path
from google import genai
 
client = genai.Client(api_key="YOUR_API_KEY")
 
TERMINAL = {"BATCH_STATE_SUCCEEDED", "BATCH_STATE_FAILED", "BATCH_STATE_CANCELLED"}
 
def track_dwell(name: str, ledger_path: str, poll: int = 30):
    prev_state = None
    entered_at = time.time()
    while True:
        job = client.batches.get(name=name)
        state = job.state.name
        now = time.time()
        if prev_state is None:
            prev_state, entered_at = state, now
        elif state != prev_state:
            record = {
                "name": name,
                "from_state": prev_state,
                "dwell_sec": round(now - entered_at, 1),
                "to_state": state,
                "ts": now,
            }
            with open(ledger_path, "a", encoding="utf-8") as f:
                f.write(json.dumps(record) + "\n")
            prev_state, entered_at = state, now
        if state in TERMINAL:
            return
        time.sleep(poll)

ここで大切なのは、状態遷移ログをサンプリング対象に入れないことです。件数が少ないログなので、汎用のサンプリングに巻き込むと、ちょうど欲しかった 1 行が落ちて「記録が無い」状態になりがちです。Batch 関連のログは無条件保存のカテゴリに分けておきます。

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この記事で得られること
24時間 SLA を閾値にすると手遅れになる理由と、状態別 p95 滞留予算で前倒し検知する設計
提出レコード数と完了レコード数を突合し、静かに落ちた行を数えて可視化するコード
予算ベース検知に切り替えて平均検知リードタイムが改善した社内運用の実測値
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