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API / SDK/2026-05-02上級

Gemini API で構築する GraphRAG — 知識グラフ × ベクトル検索の本番ハイブリッド RAG

ベクトル検索だけでは答えられない『関係性を辿る質問』を解くため、Gemini で知識グラフを抽出してベクトル検索と組み合わせる本番 GraphRAG の設計と実装を、動くコード付きで解説します。

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ベクトル検索だけの RAG を半年ほど運用していて、「埋め込みは正しいのに、複数ホップの関係性質問に答えられない」というモヤモヤを感じたことはないでしょうか。たとえば「政樹さんが2024年に書いた記事の中で、Stripe を扱っていて、かつ Cloudflare Workers にデプロイしているものを挙げて」という質問。文章としてのチャンクはどこかにあるはずなのに、ベクトル類似度では拾い上げられず、Gemini が「該当が見つかりませんでした」と返してくる、あの感じです。

私自身、Dolice Labs の4サイトを横断する社内ナレッジ検索を作っていて、まさにこの壁にぶつかりました。チャンクの近傍検索だけでは、エンティティ同士の「結びつき」を検索の対象にできありません。そこで導入したのが GraphRAG — 知識グラフとベクトル検索を組み合わせるハイブリッド RAG のアプローチです。ここで扱うのはGemini API を中核に据えた GraphRAG の本番実装を、設計の意図と動くコードの両面からお話しします。

なぜベクトル検索だけでは不十分なのか — GraphRAG が解く3つの限界

普段の RAG 実装は、おおむね「文書をチャンクに刻む → 埋め込みベクトル化 → 質問を埋め込み → 近傍検索 → Gemini に渡す」という流れです。これで解ける問題は意外と多いのですが、半年ほど本番で運用してみると、明確に不得意な領域が見えてきます。

第一に、マルチホップの関係性質問です。「A が依存している B、その B を作成した C は誰か」のような問いは、A・B・C それぞれのチャンクを個別に取得しても答えになりません。Gemini が回答を組み立てるには、A→B→C という関係の連鎖そのものをコンテキストとして渡す必要があります。

第二に、集約・カウント・比較系の質問です。「2026年に書かれた記事のうち、Cloudflare Workers を扱っていて、かつタグに production が付いているものは何件か」を素朴な近傍検索で答えるのは無理があります。これは関係データベースの JOIN + COUNT 相当の演算を裏で行わないと正確には返せません。

第三に、根拠の構造化された提示です。Gemini は出典付きで回答するように指示すれば応じてくれますが、出典が「チャンクのテキスト断片」だけだと、ユーザーが事実関係をたどりにくいのです。グラフ構造があれば「このノードとこのノードがこういう関係にあるから、この結論」という説明を、ノード ID 付きで一意に提示できます。

GraphRAG はこの3つの限界に対し、ベクトル検索を捨てるのではなく、グラフを「もう一本の検索チャンネル」として並走させるというアプローチを取ります。ここを誤解してグラフ単独に置き換えると、フルテキストの曖昧マッチで取りたい情報を取り逃すので注意してください。

GraphRAG の全体アーキテクチャ — Gemini をどこに使うか

私が本番で採用しているアーキテクチャは、インデックス側と検索側で Gemini の役割が異なります。

インデックス側では、Gemini 2.5 Pro が「文書を読んで知識グラフの三つ組を抽出する」役割を担います。ここでは精度が最重要なので、Flash ではなく Pro を使い、Function Calling で構造化出力を強制します。生成された三つ組(entity1, relation, entity2)は Neo4j(あるいは TigerGraph、Memgraph などの好きなグラフ DB)に書き込み、同時にチャンク自体を text-embedding ベクトルとして Pinecone / pgvector / sqlite-vec などに格納します。

検索側では、まずユーザーの質問を Gemini Flash に投げて「これはエンティティ検索か、関係性検索か、それとも全文セマンティック検索か」を分類します。この分類は応答速度が支配的になるので、Pro ではなく Flash の出番です。分類結果に応じて、Cypher クエリを生成してグラフを叩く、または埋め込み検索でチャンクを取る、あるいはその両方を実行します。

最後に、Gemini 2.5 Pro が「グラフからのサブグラフ + ベクトル検索のチャンク」を統合して回答を生成します。ここでも Pro を使う理由は、複数の情報源を矛盾なく束ねる能力が Flash では足りないシーンが多いからです。コスト面では、検索段階で Flash を多用しているので、全体としては Pro 単独 RAG よりむしろ安く済みます。

このアーキテクチャは Gemini 埋め込み + 再ランキングで本番 RAG の精度を底上げする実装 と相性が良く、グラフトラバーサルで取得したチャンクと、ベクトル検索で取得したチャンクを混在させたうえで、Cohere Rerank や Gemini ベースの自前リランカーで並べ替えると更に精度が上がります。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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この記事で得られること
ベクトル検索だけのRAGで『答えはあるはずなのに正解にたどり着けない』状態に詰まっていた人が、グラフトラバーサルを組み合わせる本番アーキテクチャを今日手に入れられる
Gemini 2.5 Pro で文書から (entity, relation, entity) の三つ組を抽出し、Neo4j とベクトルストアを並列で更新するインデックス構築パイプラインをコピー&ペーストで動かせるようになる
RAG の回答精度が頭打ちになっている本番システムを、ハイブリッド検索 + 再ランキング + コンテキスト統合の3層に再設計し、関係性質問の正答率を底上げできる
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