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⬡ 高度な活用/2026-07-11上級

Gemini の Function Calling に危険度別の承認ゲートを挟む実装

自律エージェントに全権を渡すのは怖い。Gemini の Function Calling ループで、危険度に応じてツール呼び出しを自動実行と承認待ちに振り分け、承認後に結果をモデルへ返す承認ゲートを実装します。

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無人で回していた深夜バッチのログを翌朝に眺めていて、思わず手が止まったことがあります。要約だけを任せていたつもりのエージェントが、空き容量を確保しようと古いファイルの削除に手をのばしかけていたのです。実行はされていませんでした。ツールとして登録していなかったから、というだけの理由で。

個人開発で自動処理を無人運用していると、この「たまたま登録していなかったから助かった」に何度か出会います。安全が設計ではなく偶然に依存している状態です。かといって、すべてのツール呼び出しに承認を挟めば、無人で回す意味がなくなります。

私が落ち着いたのは、その中間でした。読み取りのような無害な操作は自動で流し、削除や課金や外部送信のような取り返しのつかない操作だけ、人間の承認を挟む。ツールを危険度で階層化し、階層ごとに扱いを変える承認ゲートです。以下では、Gemini の Function Calling ループにこのゲートを組み込む実装を、動くコードと一緒に組み立てていきます。

「全部自動」でも「全部承認」でもうまくいかない理由

Function Calling の素直な実装は、モデルが返した functionCall をそのまま実行し、結果を functionResponse として戻す、という往復です。この素直さが、無人運用では危うさになります。モデルは基本的に善意で動きますが、プロンプトの言い回しひとつ、あるいは想定外の入力ひとつで、破壊的なツールを選ぶ確率はゼロにはなりません。

逆に、すべての呼び出しを承認制にすると、今度は人間がボトルネックになります。私が計測した範囲では、無人バッチ200件の実行でモデルが要求したツール呼び出しは合計612回でした。この612回すべてに承認を求めていたら、無人運用は成立しません。

鍵は、612回のうち本当に危険なものがどれだけあるか、です。実際に危険度でタグ付けしてみると、破壊的・不可逆な操作は18回、全体の約3%にすぎませんでした。残りの97%は読み取りや冪等な書き込みです。つまり、3%だけ人間に見せて、97%は自動で流す。この配分こそが、無人運用と安全性を両立させる現実的な落としどころでした。

階層性質扱い例
green読み取り・副作用なし自動実行ファイル一覧、検索、要約
yellow冪等・復元可能な書き込み方針で切替(既定は自動)レポート出力、タグ付与
red不可逆・課金・外部送信必ず承認待ち削除、決済、メール送信

ツールを危険度でタグ付けする

まず、ツール名と危険度、そして実際の処理を分けて持ちます。危険度の判定を実行ロジックから切り離しておくと、後でポリシーだけを差し替えられます。

# risk_policy.py — ツール名 → 危険度階層のマッピング
# 未登録のツールは最も危険な "red" に倒す(fail-safe)
RISK_TIER = {
    "list_files": "green",
    "read_file": "green",
    "search_docs": "green",
    "write_report": "yellow",
    "add_label": "yellow",
    "delete_old_backups": "red",
    "charge_customer": "red",
    "send_email": "red",
}
 
def tier_of(tool_name: str) -> str:
    # 知らないツールは承認必須にする。安全側に倒すのが原則
    return RISK_TIER.get(tool_name, "red")

get の既定値を "red" にしているのが要点です。新しいツールを足してポリシーへの登録を忘れても、勝手に自動実行されることはありません。安全側の初期値は、抜けが必ず起きる前提の設計です。

次に、Gemini へ渡す関数宣言と、実際に処理を行う executor を用意します。ここでは google-genai SDK を使います。

from google import genai
from google.genai import types
 
# 関数宣言(モデルに見せるスキーマ)
tools = types.Tool(function_declarations=[
    types.FunctionDeclaration(
        name="search_docs",
        description="社内ドキュメントをキーワード検索する",
        parameters=types.Schema(
            type=types.Type.OBJECT,
            properties={"query": types.Schema(type=types.Type.STRING)},
            required=["query"],
        ),
    ),
    types.FunctionDeclaration(
        name="delete_old_backups",
        description="指定日数より古いバックアップを削除する",
        parameters=types.Schema(
            type=types.Type.OBJECT,
            properties={"days": types.Schema(type=types.Type.INTEGER)},
            required=["days"],
        ),
    ),
])
 
# 実際の処理(承認を通ったときだけ呼ばれる)
def _search_docs(query: str) -> dict:
    return {"hits": [{"title": "運用手順", "score": 0.82}]}
 
def _delete_old_backups(days: int) -> dict:
    return {"deleted": 3, "days": days}
 
EXECUTORS = {
    "search_docs": _search_docs,
    "delete_old_backups": _delete_old_backups,
}

宣言と executor を別の辞書に分けているのは、承認ゲートが「宣言は知っているが、まだ実行はしない」という状態を扱う必要があるからです。モデルがツールを呼びたいと言ってきても、赤い階層なら executor を呼ばずに保留します。

✦

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この記事で得られること
✦ツールを green/yellow/red の3段階でタグ付けし、危険な呼び出しだけ人間の承認を挟む設計
✦承認待ちを JSON で永続化し、翌朝に承認してからモデルへ結果を返して続きを走らせる再開手順
✦並列 functionCall の一部だけ却下する、tool_config: ANY で止まらなくなる、といった実運用の落とし穴と回避策
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