レビュー記事を書くときは「良いところ」と「改善が必要なところ」をバランスよく書くべきなのでしょうが、Gemini 3.1 Pro に関しては正直に言うと「良いところが予想以上に多く、悪いところも予想より多かった」というのが率直な感想です。
私は複数のアプリを個人で開発・運営しながら、AI 技術ブログも運営しています。その中で Gemini 3.1 Pro をリリース直後から使い始め、この記事を書いている 2026 年 5 月現在で約 3 ヶ月が経ちました。毎日のように使い続けた中で見えてきた、良い面・限界・Claude との使い分けについて書きます。
使い方の前提
誤解を避けるために、私の使い方の文脈を先に整理します。
作業の中心は個人アプリの開発(iOS/Android)で、その周辺でコンテンツ制作、ブログ運営の自動化、API 連携の設計などを行っています。Google AI Studio の UI から使うこともありますが、大半は Gemini API 経由でコードから呼び出す形です。1 日の API コール数は 100〜300 件程度です。
2.5 Pro から何が変わったか
3.1 Pro を使い始めて最初に感じたのは「地の力が上がった」という感覚です。2.5 Pro で「もう少し踏み込んでほしいな」と感じていた場面で、3.1 Pro は自発的に踏み込んでくれます。
具体的に体感した変化を列挙します。
コードのエラー診断が格段に改善しました。2.5 Pro はスタックトレースを見て「この行が原因です」と言うだけのことが多かったのですが、3.1 Pro は「なぜその行でエラーが出るのか、呼び出し元のどの処理が原因か」まで追ってくれます。
長い会話での一貫性が上がりました。2M トークンのコンテキストウィンドウの恩恵もあると思いますが、30 回以上のやり取りが続いても最初の前提を覚えていて参照してくれます。
日本語の自然さが向上しました。これは個人的に重要で、2.5 Pro は時々「日本語をそのまま英語から翻訳した」ような硬い文章を生成していましたが、3.1 Pro は自然な日本語で書けています。
Deep Think モードの応答品質が大幅に上がりました。2.5 Pro の Deep Think と比べると、推論の「深さ」ではなく「整理」が良くなった印象です。結論に至る過程が読みやすくなっています。
マルチモーダルの精度が上がりました。特にスクリーンショットやアプリの UI 画像を見せてフィードバックを求めるタスクで、より具体的なアドバイスが返ってくるようになりました。
一方で、コードの生成速度については体感的にほぼ変わりませんでした。これは期待していた改善点のひとつだったので、少し残念でした。
「使えた」タスク 15 選
3 ヶ月で特に印象に残った活用場面を挙げます。
Swift コードのパフォーマンス分析は非常に良かったです。「このコードを Instruments で計測すると問題が出そうな箇所はどこか」という問いに対して、メモリ・CPU・バッテリーの観点から具体的な箇所を指摘してくれます。
API 設計のレビューも優秀でした。REST エンドポイントの設計を見せて「将来のバージョンアップ時に互換性が保てるか」という観点でのレビューは、実際の開発で何度も助かりました。
多言語対応の翻訳は Google らしい強みを発揮します。特に英語・日本語間の往復翻訳では Claude よりも自然な日本語に仕上がることが多いです。
アプリストアの審査対策は意外な強みです。「このスクリーンショットとメタデータでリジェクトされるリスクはあるか」という問いに対して、具体的な Apple Guidelines の条項を参照しながら分析してくれます。
長文ドキュメントの要点抽出は 2M コンテキストの恩恵が大きいです。100 ページを超えるドキュメントを一度に読み込んで「3 点にまとめて」というタスクは、他のモデルには真似できません。
ADK を使ったエージェント設計は当然ながら Google 製品との親和性が高く、特に Vertex AI との連携設計では的確なアドバイスが返ってきます。
他にも、Firebase のセキュリティルール設計、Google Analytics 4 のクエリ作成、AdMob の広告配置最適化提案、Kotlin Coroutines のデバッグ支援、Sheets マクロ(GAS)の自動化設計、NotebookLM との連携ワークフロー提案、Google Cloud のコスト試算、マーケティングコピーの A/B 案生成、ユーザーインタビューの仮説設計などで良い結果が得られました。
正直に言うと「使えなかった」タスク 5 つ
良い話だけを書いても価値がないので、使えなかった場面も正直に書きます。
Xcode や Android Studio 固有の設定問題は苦手です。「ビルドは通るのにシミュレーターで動かない」「Gradle の依存関係がこじれている」といった IDE 固有の文脈が絡む問題では、解決に至らないことがありました。Cursor や Claude Code を使うほうが効果的な場面です。
App Store の審査結果の予測精度は限界があります。「このアップデートは審査が通るか」という問いは、過去の事例をもとに確率論的な回答をしてくれますが、当たらないことも多いです。これは Apple のガイドラインが動的であるためで、モデルの問題というより本質的な難しさです。
特定の Unity バージョン(2025.x以降)の API 仕様は学習データが薄いようで、deprecated になった API を使う提案が出てくることがありました。コードを実際に試してエラーが出て初めて気づく、という体験を 2〜3 回しました。
長期にわたるコンテキスト(20 往復以上)の保持は、コンテキストウィンドウが大きくても「以前の仕様決定を覚えているか」という観点では不完全なことがありました。特に会話の序盤で合意した設計前提が、後半では参照されなくなることがありました。
細かいレイアウト調整の指示受けは、SwiftUI・Jetpack Compose のどちらでも「大枠はできるが細部が惜しい」という場面が多いです。ピクセルレベルの調整を繰り返すよりも、大まかな実装を Gemini に任せて細部は自分で修正するほうが効率的です。
Claude との使い分け:3ヶ月で見えてきた分担
Gemini 3.1 Pro を使いながら、Claude Opus 4.6 も並行して使い続けています。3 ヶ月でだいたい分担が定まってきました。
Google エコシステム(Firebase, GCP, Android, Workspace)に関わる作業は Gemini です。長い文書の分析や要約も Gemini が強いです。多言語対応、特に英語・日本語の翻訳も Gemini を使います。
コード設計のレビュー、設計の相談、複雑なアーキテクチャの議論は Claude のほうが深みがあります。ライティングの品質(英語の技術文書)も Claude のほうが精度が高いと感じています。思考の深さが問われる問題(拡張思考を使う場面)は Claude を選びます。
どちらでも良い場面(一般的な調査、コードの補完、基本的な説明)は、コスト感と気分で選んでいます。
API コスト感について
Gemini 3.1 Pro の API 単価は、Claude Sonnet 4.6 より体感で 30〜50% 安いです(タスクの入出力バランスによりますが)。月間のコストは Gemini が全体の 40%、Claude が 60% 程度の比率で落ち着いています。
個人開発者にとってこのコスト差は無視できません。Google エコシステムの作業や長文処理を Gemini に任せることで、月額コストを実感として 20〜30% 削減できています。
全体を振り返って:Gemini 3.1 Pro は「Google を使う人の相棒」として完成した
3 ヶ月使い続けた総括としては、「Gemini 3.1 Pro は Google エコシステムを使う開発者にとって、なくてはならないモデルになった」というのが正直な評価です。
特に Firebase・GCP・Android を日常的に使う方にとっては、他のモデルに対して明確な優位性があります。汎用的な「AI アシスタント」としての評価は Claude や GPT-5 と並ぶレベルですが、Google 製品との親和性という点では頭一つ抜けています。
使えなかった場面も正直に書きましたが、それは「苦手領域がある」というより「向いている作業と向いていない作業がある」という話です。向いている作業に集中して使えば、費用対効果は非常に高いモデルです。