アーティスト・個人アプリ開発者の廣川政樹です。Gemini Lab を運営しています。
Gemini 3.2 が使えるようになってから、もう3週間ほど経ちました。新モデルが出るたびに「試してみないと」という気持ちと「また業務フローを組み直す手間があるのでは」という気持ちが同時にやってくるのですが、今回は後者の心配が予想より小さかった——これが最初の率直な感想です。
ベンチマーク比較や詳細な API ガイドは別の記事に任せて、今日は「3週間実際に使ってみた一個人の観察記録」として書かせてください。
一番驚いたのは「返答の重心」が変わったこと
使い始めて最初にびっくりしたのは、コードレビューをお願いしたときの返答の構造でした。
以前のモデルだと、たとえば「この Swift コードの改善点を教えてください」と頼むと、10〜15 項目の箇条書きが返ってくることが多かったんです。全部正しいんだけど、多すぎて「どれから直すか」の判断を自分でもう一度やり直す必要があります。知識は提供されているのに、意思決定コストはまったく減っていない、という感覚です。
Gemini 3.2 は、同じ質問に対して「まずここだけ直してください、残りはその後」という返し方をしてくれることが増えました。最初は「手抜き?」と思ったんですが、実際に指示通りに直すと確かにコードが読みやすくなって、次の問題が自然に見えてくる。返答の量ではなく、返答の重心が変わった——そんな印象でした。
ただこれは、私がその日コードに集中できる状態かどうかにも依存していそうです。「全部出して、自分で選ぶ」モードのときに Gemini が絞り込んだ回答をしてくると、逆に物足りなく感じることもあります。
「なぜ」を聞いたときの厚みが変わった
個人開発をしていると、完成したコードよりも「なんでこう書くの?」「別の書き方ではまずいの?」という問いへの答えが欲しいことが多いです。
以前は「おすすめのアプローチです」「パフォーマンス上の理由です」という回答が多くて、それ以上追いかけると「別のアプローチとしては…」という羅列が返ってきました。有用なんだけど、私のコードに対して話しているというより、一般論を読んでいる感じがしていました。
3.2 は、聞き方をあまり工夫しなくても「このアプローチが適切な理由は、あなたが提示したコードでは〇〇という制約があり、それに対して〜という設計が合っているからです」という形で説明してくれることが増えました。私のコードの文脈で語ってくれているという感覚が、少し増えた気がします。
「少し」と書いたのは意図的で、毎回そうなるわけではないからです。特に長いファイルを貼り付けた後は、以前と同じような「一般的なベストプラクティス」に戻ることもあります。長いコンテキストをどう扱うかは、まだ一定ではないのかもしれません。
正直、まだよく分からないこと
3週間使っていて、自分の中で答えが出ていないことがいくつかあります。
temperature の体感が微妙に変わった気がする
temperature=0.3 で運用していたいくつかの処理を同じ設定で試すと、3.1 よりわずかにばらつきが増えた印象があります。ただ件数が少なくて統計的に言えないレベルなので「気のせいかもしれない」としか書けません。本当は50件くらいで比較実験をしたいのですが、時間がなくてまだできていません。もし同じ体験をされた方がいたらぜひ教えてください。
3.1 Pro の「安定感」と 3.2 の「独自解釈」をいつ使い分けるか
3週間の感覚だと、3.1 Pro のほうが「予測しやすい」場面があります。特に決まったフォーマットで出力させたいとき。3.2 は少し「独自解釈」が入ることがあって、それが良いときと困るときがあります。今はまだ「どっちを使うか」の判断軸が固まっていません。これは使い込むしかないので、もう少し時間が必要です。
今の私のモデル使い分け(2026年5月版)
参考として、現時点でどう使い分けているかを書いておきます。1ヶ月後には変わっているかもしれません。
朝の情報整理 → Gemini 2.5 Flash 速度重視で、まず読む量を減らすために使います。応答が速いことと、頭がまだ動いていない時間帯との相性がいいです。
メイン実装タスク → Gemini 3.2 新機能開発やリファクタリングはここ。コンテキストが新鮮な状態で使うと一番気持ちよく動きます。長時間のセッションより、1〜2時間の集中セッションで使うほうが質が高い気がしています。
既存コードのデバッグ・仕様確認 → Gemini 3.1 Pro 長いコードを貼り付けて「この関数の意図を説明して」という使い方は、まだ 3.1 Pro のほうが安定している印象です。慣れた道を歩くような感覚があります。
ドキュメント・文章作成 → 3.2 または 2.5 Pro 日本語の長文は 3.2 が書きやすくなりました。英語向けのリリースノートや README は 2.5 Pro で引き続き問題ない印象。
Google I/O 2026 の前に感じていること
今月は Google I/O がありますね。毎年この時期になると「また新しいモデルが来るのかな」と思うのですが、今年は少し気持ちが違います。
モデルの性能向上より、使い続ける上での予測可能性が欲しいな、という感覚があります。Gemini 3.2 は確かに能力が上がっていますが、「いつ何を期待できるか」のモデルが私の中でまだ固まっていません。もう少し使い込んでから判断したいのに、また新しいのが来てしまう——というのが本音です。
もちろん、発表当日は絶対にライブで見ます。毎年そうしていますし、今年も変わらない気がします。I/O が終わったら、またここに書きます。
3週間分の雑感を書いたら、思っていたより長くなりました。読んでくださってありがとうございます。「自分の Gemini 3.2 体験とは違う」という方がいたら、コメントか SNS でぜひ教えてください。モデルの使い方は人によってかなり違うので、他の人の観察記録が本当に参考になります。